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TSE教育ホットライン

Vol.341 連載企画第十一回「コーポレート・ガバナンスの観点からみる家計の投資への意思決定②」

日本人の金融リテラシーと資産形成に関する国際比較に関する論点考察
第十一回は「コーポレート・ガバナンスの観点からみる家計の投資への意思決定②」です。


前回までは、株式会社の考え方の違いとして、英米では株主第一主義の会社が、日本ではステークホルダー主義の会社が多いとされるという話をしました。
今回は最終回として、家計の資産選択に強い影響を与えているものは何か、に迫ります。

前回述べましたように、第二次世界大戦後、日本はどちらかというと、株主を軽視する形態の資本主義だったこともあり、社会において株式を通じて資本を提供するリスクそのものが軽視されていたと言えます。
言い方を変えれば、そのリスクがもたらすリターンも軽視されていたわけです。

そういう社会で、株式の保有を通じて資産を形成する、という選択は必ずしも合理的ではありません。
会社の経営者との良好な関係のもと、従業員として会社の業績に貢献し評価されることによって得られる報酬に期待する事が、合理的な選択だったのです。
会社が退職金という形で報酬の一部を退職まで留保し、事実上、社員の資産形成をしました。
また、一部では、会社が公的な年金とは別の独自の年金制度を社員に用意していました。

こういった日本社会の仕組みはジャパン・アズ・NO.1と1980年代の終わりごろには世界で絶賛されていました。
しかし、従業員に対する長期的債務は会社の事業リスクに対する姿勢をより慎重にし、それが企業収益力の低下を招くこととなり、グローバルな競争が激化する中で“日本的システム”が行き詰まっていきます。

その結果、日本において会社のガバナンスがより株主重視の方向に見直され、企業年金の多くが廃止されました。
日本の家計の資産形成における株式の割合の低さが問題になっていくのですが、それは80年代までの日本社会の行き詰まりと同じ文脈と言えるのです。

日本人は金融リテラシーが低いという理由だけで、株式投資をしなかったわけではありません。
また昨今、日本で若い世代の家計の資産形成における株式の割合が増加しているという見解が一部に出ていますが、それは、日本人の金融リテラシーが向上したからとは必ずしも言えないでしょう。

大きな文脈では、会社のガバナンスを誰が何を目的に行うか、という事が、実は家計の資産選択に強い影響を与えていたのです。


(金融リテラシーサポート部 石田 慈宏)


連載「日本人の金融リテラシーと資産形成に関する国際比較に関する論点考察」は今回が最終回です。
次回からは、渋沢栄一にまつわる新連載をお送りいたします。引き続きご期待ください。

記事紹介「渋沢栄一に迫る」「合本主義が生んだ東京株式取引所」

NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公であり、新1万円札の顔になることでも注目されている渋沢栄一。
「近代日本資本主義の父」とも呼ばれる渋沢の凄さを知るための記事を紹介します。


①【渋沢栄一に迫る・前編】
渋沢栄一が調整役となり成立した「銀行制度」「株式会社制度」が明治以降の日本の発展を支えた

②【渋沢栄一に迫る・後編】
現代人が学びたいのは渋沢栄一の「多様性を重んじ、選択肢を生み出す姿勢」

「先生のための冬休み経済セミナー」にもご登壇いただいた、横山和輝先生に解説いただいています。
前編では、渋沢栄一の偉業を深掘りし、後編では、渋沢の生き様から、現代を生きる私たちが学ぶべきヒントを探ります。


③【合本主義が生んだ東京株式取引所】
「近代日本資本主義の父」渋沢栄一をももクロと一緒に学ぶ

東証が現在実施している渋沢栄一についての特設展示について、記事と動画で紹介します。

Web番組「Fの遺伝子」では、出演者のももいろクローバーZとロバート・キャンベル氏が一緒に渋沢栄一について学んでいます。
記事と合わせて是非ご覧ください。


なお、横山先生が渋沢栄一について解説するラジオ番組も放送中です。こちらも是非ご聴取ください。

【渋沢栄一から学ぶ経済】
ラジオNIKKEI第1 毎週月曜日 12:00~12:30
インターネットラジオ「radiko」でもご聴取いただけます。


出演:Gパンパンダ 星野光樹さん、一平さん
解説:名古屋市立大学大学院経済学研究科 横山 和輝 准教授

記事紹介「歴史的な視点で経済や市場を学ぶ」

弊社Webサイト「東証マネ部!」の記事紹介です。

証券やデリバティブ商品を売買できる市場(しじょう)。
その仕組みができた背景や、経済にどのような役割を果たしているのか等について解説いたします。

2021/02/20(土)公開
【第10回】証券市場誕生!(前編)
【第10回】証券市場誕生!(後編)