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Vol.344 連載第三回「澁澤栄一と東京株式取引所」

第三回は、澁澤の合本(がっぽん)主義についてもう少しお話していきます。

合本主義とは、「公益を追求するという使命や目的を達成するのに最も適した人材と資本を集め、事業を推進させるという考え方」だと、澁澤研究者の間では解釈されています。
世界で最初の株式会社である東インド会社は、新大陸での国益を確保する為の国家をあげての合本事業でしたので、澁澤の合本主義は、実は、17世紀欧州の重商主義下の特許状会社に近いかもしれません。
欧米では、やがて、これらの国益を追求する為の巨大な独占的な会社が、私的な利益を追求する株式会社に変化していくわけですが、産業革命後の欧米の帝国主義の脅威にさらされていた当時のアジアや日本の状況において、澁澤が最大の公益を国家の存立という次元において、私的な利益追求ではなく公的な利益を追求する使命や目的の為の事業体として会社というものを考えたのは無理もないと思われます。
ただ、彼の中には、幼少期から農民・商人としての体験による、江戸幕府風の「お上」に対する敵対心があり、単に国家が商業によって国富を追求する重商主義ではなく、商人が商業によって国家を富ませ、商人は儒教的な道徳に従いながら、国家を富ませるという私益を得るという姿を思い描いていました。
澁澤の思想では、事業の主体はあくまでも民であり、国家や官僚達ではありませんでした。
とはいえ、澁澤の事がわかり辛いのは、お上が嫌いなのに、自分自身が若い頃は、一橋藩という江戸幕府体制のお上そのものの藩士となったり、幕臣となったり、明治政府の大蔵官僚となったりしながら、いわば上からの改革を行った点です。
次回にはそのあたりの話をしてみたいと思います。

(金融リテラシーサポート部 石田 慈宏)

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