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Vol.351 連載第十回「澁澤栄一と東京株式取引所」

前回、澁澤が第一国立銀行の設立にあたり株主の公募を行った話をしました。
100万円が目標金額でしたが、実際には44万円と少ししか集める事が出来ませんでした。
澁澤は、公共の利益の増進の為に皆が資金を出し合って作る“合本組織”を掲げていましたが、株式の公募とはまさに、広く一般に合本組織への参加を促すためのもので、その為に有名な演説も行っています。
演説の概要は、「銀行というのは、世間に存在する雨の一滴の様なお金を大河の流れにして、水が必要な大地に水をいきわたらせるための組織です」といったような内容です。

しかしながら、結果、澁澤の思ったように一般からの資金は集まりませんでした。
澁澤の後日の回想によれば、この時に、こういった証券を通じた資金の調達を円滑にする為に株式取引所が必要であるという事に気が付いたそうです。
つまり、澁澤はこのときはじめて、合本組織を成り立たせるための「資本市場」というものの重要性に気が付いたという事になります。

初期の資本主義は、まさに資本の私的所有によってもたらされる利益によって、さらに資本が蓄積されて成長するというメカニズムで、そういった資本主義に澁澤の言うような合本的な考え方は存在していませんでした。
それが、19世紀初頭に、欧州で鉄道会社が設立される様になると、それに必要な資本は膨大になり、誰かが私的に所有することなど不可能になりました。
また、私的な資本の所有者のパートナーシップ型の無限責任による経営では、鉄道会社のような複雑で不確実性の高いビジネスをマネジメントする事も不可能でした。
そうした事態に対し、欧米では、大航海時代に作られた東インド会社から発展した株式会社制度を上手く適用して行きます。
資本は誰かが私的に所有するのではなく、広く分散して所有される現代的な資本主義の段階を迎えるのです。

そういった資本の株式所有による分散所有化という新しい資本主義を日本に最初に導入しようとしたのが澁澤栄一ということになります。
そして、資本の分散所有のための資本市場としての証券取引所を日本に作らなければならないと気が付いたからこそ、澁澤は「日本の資本主義の父」と言われるのです。

(金融リテラシーサポート部 石田 慈宏)

見学ツアーの一部再開のお知らせ

東京証券取引所及び大阪取引所は、今般の新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、一部の見学ツアーを再開することとしましたので、ご案内申し上げます。
なお、見学ツアーは事前予約制で、今後の感染症の状況によってはご予約後にご案内を中止することがございますので、あらかじめご了承ください。
また、予約不要の自由見学は引き続き中止となりますのでご留意ください。
ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

大納会・大発会ライブ配信のお知らせ(大納会には吉沢亮氏、ディーン・フジオカ氏をお招きします!)

日本取引所グループ年末年始恒例の「2021年大納会・2022年大発会」につきまして、JPX公式YouTubeチャンネルで、東京・大阪会場の様子はライブ配信し、式典終了後にアーカイブします。
なお、本年の大納会では、東京会場にはNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公であり、東京証券取引所の前身である東京株式取引所の創設に重要な役割を担った渋沢栄一を演じられた【吉沢 亮氏】を、
また大阪会場には大阪取引所の前身である大阪株式取引所の設立に尽力した五代友厚を演じられた【ディーン・フジオカ氏】をゲストにお迎えして、一年を締めくくりたいと存じます。