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TSE教育ホットライン

Vol.361「連載第二回「歴史の中の市場と証券」」

●律令国家における市場
 歴史的には律令国家とは何か、いつ成立したのかという難しい問題があるのかもしれませんが、7、8世紀から10世紀頃の日本の事だと考えましょう。
例えば班田収授法(国家が土地を所有し国民に割り当てる法律)のように、国家が財やサービスを一元的に管理し、配分を決める仕組みを指令経済と言いますが、律令国家における経済※の仕組みは、指令経済でした。
これは、現代の私達が暮らしている社会の基本的な仕組みである"市場"型経済ではない"経済"の代表的な仕組みです。

 古代日本は市場型経済ではなかったのですが、"市(いち)"というものは存在していました。
市は律令国家の指令所であり、物資が集中する都(みやこ)に置かれていて、都の住人達にその集まった物資の一部を販売する場所でした。
そこで販売される物資の価格は律令政府が決めていて、その価格を沽価(こか)と言います。

 要するに需要と供給で価格が決定するのではなく、国家(政府)がモノと貨幣の交換レートを決めていたわけです。
逆の言い方をすれば、財やサービスに対する需要と供給を国家がコントロールしているという事です。
なぜ、コントロールするのかと言えば、例えば農産物は自然条件によって産出量が異なります。
自然に任せておけば過不足が生じ生活が破綻するのでそういった事を回避する為には蓄えが必要だからです。
それを、個人個人に任せず国家が強制的に行っているのが指令経済というわけです。

 現代においても、目に見えるモノを生産せず、決められた給料をもらい、店頭の価格通りに物を買って消費して暮らす多くの人は、まるで律令国家の住人のようです。
その物の配分や価格を誰がどうやって決めているのかに関心が無ければ市場経済なのか指令経済なのかはあまり関係ないとも言えます。
それが、上手く機能していて、暮らし向きを左右しないのならば、市場経済でも指令経済でも問題はないかもしれません。
現代でも、会社や家庭の中での資材の配布や仕事の分担は、需要と供給で決めているのではなく、誰かが決めている筈です。
その決め方も、時には、昔からそうして来たという慣習によって決められる事も多いですよね。
そういった全てを否定しているのではありません。
慣習の中には、道徳的な価値が含まれていることも多く、漁の獲物は平等に住人で分け合うというようなことで上手くやれる場合も多いのです。
 ただ、私達は、"全て"を中央で誰かが決めてコントロールすることは、困難であることを歴史の経験上知っています。
日本に於いても、原始的な市場経済が律令国家の破綻後に現れます。
次回はそのお話をしたいとおもいます。

※経済という言葉の定義については、『幸せのための経済学』菱沼宏一郎(岩波ジュニア文庫2011年)より、『多様な好みや価値観を持つ人が限りある資源を用いてモノやサービスを生産し消費するシステム』とします。

(金融リテラシーサポート部 石田 慈宏)

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今回の経済教室では、共生社会の実現のために、経済学の知見を踏まえてどのような社会福祉の授業が構想できるか、『障害者の経済学』の著者である慶應義塾大学教授の中島隆信先生の講演と、教科教育の研究者、現場教員との討議を通して考えてゆきたいと思います。
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場所: 慶應義塾大学三田キャンパス北館+オンライン(Zoom形式)

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授業支援プログラムなどの告知!/日本教育新聞社

弊社では日本教育新聞社様の取り組みに参加し、たくさんの学校様へ弊社の授業支援プログラムに関する情報などを発信しました。
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