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2019/08/28 東証 野村證券株式会社に対する処分について

 

株式会社東京証券取引所は、野村證券株式会社に対して、取引参加者規程第34条第1項の規定に基づき下記のとおり処分するとともに、同規程第19条第1項の規定に基づき、業務改善報告書の提出を請求しましたので、お知らせいたします。

処分の内容

東京証券取引所における処分

過怠金1,000万円の賦課

  • 本件は、日本取引所自主規制法人の審議結果に基づき決定したものです。

違反行為の概要

経緯

金融庁は、野村ホールディングス株式会社(以下「野村HD」という。)に対する金融商品取引法第57条の23の規定に基づく報告徴求に対する報告内容及び野村HD監査委員会傘下の外部有識者による特別調査チームの調査結果等を踏まえ検証した結果、野村證券株式会社(以下「同社」という。)において、情報管理に係る経営管理態勢が十分ではないと認められる状況及び過去の行政処分を踏まえた業務運営の改善が不十分な状況が認められたとして、2019年5月28日、同社に対し、行政処分を行った。

違反行為の概要

  1. 情報管理に係る経営管理態勢が十分ではないと認められる状況

    2019年3月5日、同社市場戦略リサーチ部所属のチーフストラテジストは、株式会社東京証券取引所(以下「東証」という。)の「市場構造の在り方等に関する懇談会」の委員を務める同社のグループ会社である株式会社野村総合研究所の研究員から、東証で議論されている市場区分の見直しについて、上位市場の指定基準及び退出基準が時価総額250億円以上とされる可能性が高くなっていると推測される旨の情報(以下「市場構造に関する東証における検討状況に係る情報」という。)を入手した。同ストラテジストは、同日、同社社内及び野村HDの海外現地法人であるノムラ・インターナショナル(ホンコン)LIMITED(以下「NIHK」という。)の少なくとも営業員6名並びに外部のファンドマネージャー1名に対し、市場構造に関する東証における検討状況に係る情報をメールで伝達した。また、翌6日には、メーリングリストを利用し、同様の情報を含むメールを、多数の国内外機関投資家及び営業員に送付した。当該情報伝達を受けた営業員のうち、3名の営業員(うち1名はNIHKの営業員)が少なくとも外部機関投資家延べ33機関に対し、市場構造に関する東証における検討状況に係る情報を提供して勧誘する行為が認められた。
    当該ストラテジスト及び当該営業員が行った一連の行為(以下「本件行為」という。)は、法令等諸規則に違反する行為ではないものの、一部特定の顧客のみに市場構造に関する東証における検討状況に係る情報を提供して勧誘する行為であり、資本市場の公正性・公平性に対する信頼性を著しく損ないかねない行為であると認められる。 
    本件行為は、(ア)本件行為を適切に規律する規程が存在しなかったこと、(イ)本件行為に関与した社員がコンプライアンスの本質を理解しておらず、より有益な情報源を有していると示すことにより自らの評価を高めたいとの動機を優先し、市場の公正性・公平性の確保という証券会社にとって重要な役割に対する意識が不十分であるなど、証券会社の社員として求められる水準のコンプライアンス意識が欠如していたこと、(ウ)外部機関投資家に対する不適切な情報提供について、これを未然に防止すべき審査・監督体制が適切に整備されていなかったこと等を原因として発生したものと認められる。

    こうした実態を把握していなかったことに鑑みれば、同社経営陣は情報管理態勢に関する実効的な管理・監督を十分に行っておらず、経営管理態勢は十分なものではなかったと認められる。

  2. 過去の行政処分を踏まえた業務運営の改善が不十分な状況

    同社においては、2012年、東証上場会社の公募増資に係る内部者情報を機関投資家に対し提供した事実に関して、法令違反となる状況(公募増資案件に係る法人関係情報に関する管理について不公正取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていない業務運営状況及びそのような状況のなか有価証券の売買その他の取引等につき法人関係情報を顧客に提供して勧誘する行為)が認められたとして、金融庁から業務改善命令を受けている(以下「増資インサイダー事案」という。)。
    今回認められた当該ストラテジスト及び当該営業員が行った一連の行為は、いわゆる早耳情報を利用した営業行為であり、その発生原因がコンプライアンスの本質を理解していないという点において、同社が行政処分を受けた2012年の増資インサイダー事案と類似性が認められる。当該増資インサイダー事案を踏まえ、同社は、情報管理を含む内部管理態勢の見直しや、社員の職業倫理の強化・徹底等を図ってきたとしているものの、(ア)本件行為が発生し、本件行為に気付き得た社員がいたにもかかわらず、疑問や是正の声が挙がることなく、結果的にそれが看過されていたこと、(イ)野村HDが実施した社員に対する意識調査において、コンプライアンスを法令遵守に限定して捉え、本件行為について問題ないと評価する意見も一部ではあるものの確認されていることに鑑みれば、コンプライアンス意識の全社員への徹底が不十分であり、業務運営の改善が不十分な状況にあるものと認められる。

上記のとおり、同社において認められた経営管理態勢・内部管理態勢が不十分な状況に起因して発生した当該行為は、投資者の保護に欠け又は取引の公正を害する行為で、東証市場の運営に鑑みて、東証の信用を失墜し、東証及び東証の取引参加者に対する信義に背反する行為であると認められる。

お問合せ

株式会社東京証券取引所 株式部 取引参加者室
電話:03-3666-0141(代表)