TSE教育ホットライン
Vol.379「連載第二十回「歴史の中の市場と証券」」
大坂堂島米市場には大きく分けると二つの市場が存在しました。
正米(しょうまい)市場と帳合米(ちょうあいまい)取引市場です。
正米市場は、米切手の受渡が実際に行われる市場で、売買後即時に(実務上は売買成立後4日目に)、資金と米切手の交換が行われました。取引は堂島に設けられた当時、「寄場(よせば)」と呼ばれた立会場に仲買人が集まって行われました。
取引時間は9時から正午頃まででした。
取引の手法は相対取引という方式で、仲買人は全国の顧客(主に全国の富裕な商人)から受けた売り買い注文をもとに、
立会場で米切手の売り手、買い手を探すのです。この正米市場 で取引される米切手は100石が売買単位(米切手10枚)で高価なので、取引できる相手も限られ、顔見知りの仲買人間で個別に価格交渉が行われ売買されていたのです。
売買が決まるとその価格は立会場の係(米方行司(こめかたぎょうじ) )に報告され、場内にその価格が掲示されました。
売買の結果は、売り手、買い手の仲買人が自分で自分の手帳に記録していました。自分の現金で購入した米切手を売却したり、
現金で米切手を購入したりした場合は、売り手自らが米切手を買い手のところに持参したようです。
ただし、正米取引の多くは、入替両替という貸金業者の口座を通じて行われていたようで、売買して決済する4日間の間にも転売が行われる等していたので、こういった入替え業者が集まって顧客に代わって決済し、代金と米切手の授受を完了していました。顧客が取引の際に行った借り入れの決済もこの時に行うのが通例であったようで、仲買人間の決済の様子は諸資料で確認ができます。
一方で仲買人が入替両替を使った場合の決済のほか、委託者自身が入替両替を使った場合の決済、仲買人と委託者間の決済等、
様々な主体間での決済があったはずが、その辺の実務はどうもはっきりしません。
今後、そういった決済の実態がより明らかにされていくことを期待します。
先に述べたように、この正米取引は高価なので、取引に参加できる仲買人は限られていました。その上、実際に現物の米が裏側に存在していたため、最終的には現物の受け渡しにつながる可能性があり、投機のみに興味のある仲買人にとっては必ずしも使い勝手が良い取引ではありませんでした。
江戸時代の言い方でいうと、手狭(てぜま)な取引だったのです。
(金融リテラシーサポート部 石田 慈宏)
【2024年6月再開】東京証券取引所「小中高生向けレクチャーと見学」
小中高生向けの東京証券取引所の施設見学、及びレクチャーがセットになった人気の講座が、
2024年6月より再開します。
ニュースでも見る施設を実際に訪れて見学し、学んでみませんか。
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詳しくはJPXのWebサイト「東証Arrows見学」ページをご覧ください。
【東証マネ部!】今月の注目記事!!
今月は、金融教育教材の記事と、東証社員が市場改革について語っている記事をご紹介いたします。
【1つ目の記事】
最近、街の書店でも目にするようになってきた子供向けの金融教育教材。
特に幼児向けの教材として、様々な会社が「お金」を題材にしたドリルを出していますが、各社どのような工夫をして子どもに伝えているのでしょうか?
今回はZ会編集部に、ドリル制作の経緯や工夫について教えていただきました。
【2つ目の記事】
2023年3月末に、東証では「プライム」「スタンダード」市場の上場会社に対し、「資本コストや株価を意識した経営」の推進に関するお願いをしました。
メディアからは「東証によるPBR1倍割れ改善要請」といった表現で取り上げられ、最近の日本株上昇の一要因とも言われています。
一体どういうことなのか?東証担当者がわかりやすく説明します。
最近の株式市場の動向
本格的な梅雨のシーズンを前に、比較的過ごしやすい日々が続いています。
今のうちに、必要なことを片付けてしまおうとお考えの方々もいらっしゃるのではないかと思います。
ただ、天候が不順な日も続き、気温差が大きいこともありますので、体調管理にはご注意ください。
では、今回は今年4月以降の東京株式市場の動向について、簡単に市況を振り返ってみます。
2024年4月の株式市場は、月の初めは、今年に入ってからの上昇基調の一服感や、中東情勢の緊迫化などから大きく下落して始まった後、
米国ナスダック指数の最高値更新を好感して、反発する相場展開となりました。
中旬では、中東でのリスクが改めて意識されたことや円安加速による日本経済への悪影響も意識されるなどして、再び大きく下げる展開となりました。
月末にかけては、中東でのリスク懸念が薄れたことや、米国市場の株価上昇が続いたことから、若干値を戻した後、日本企業の業績悪化懸念が高まり
、一転して大幅安となったものの、日銀の緩和的金融政策の維持や米国での株高などから、大きく値を戻すなど荒い値動きとなりました。
5月になっても、東京株式市場は、米国株式市場の動向や、外国為替相場の動きの影響から、一進一退に推移しています。
先月4月1か月間について、TOPIXで見た下落率は-0.92%、
上昇した主な業種は、海運、非鉄金属、卸売株で、下落した主な業種は、パルプ・紙、小売、空運株でした。
また、昨年末との比較では、4月末のTOPIXで見た上昇率は+15.92%、
上昇した主な業種は、保険、石油石炭、非鉄金属株で、下落した業種は、陸運、空運株でした。
次号以降も、学校の授業等で参考にしていただけたら幸いです。
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