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TSE教育ホットライン

Vol.371「連載第十二回「歴史の中の市場と証券」」

織田信長の楽市楽座令では、信長自身の言葉から、市場における乱暴狼藉を厳しく禁ずる等、市場における問題に対する強いコミットメントが認められます。
これが楽市楽座と呼ばれる市場制度の重要な特徴ですが、徳川幕府は一貫して、市場における問題(主にお金の貸借りの問題)は「相対済令(あいたいすましれい)」で対応していました。

これは政権の司法権が、市場における債権を保護しないということを意味しました。
中世には、こういった債権は同業者による座によって確保されていたわけですが、徳川幕府は、平和的な商業者自身によるある種の自治にゆだねる姿勢をとります。これが前回お話しした業種別の商人集団と一体化し、やがて「株仲間」という組織・制度として機能していきます。

株仲間の株は、その業種に関する商業権で、例えば江戸にたくさんあった髪結い(現代で言う美容院、理髪店)の株もありましたので、当然その株仲間もあるといった具合です。逆に株がなければその商いをすることは出来ませんから、もはや楽市楽座とはかけ離れた制度と言えます。

一方で、株仲間は市場取引を公正に保つための自治組織として充分に機能したと考えられていて、同業者の相互監視によって、政権がいちいち介入しなくても効果的に市場経済を運営することを可能にしたとも考えられています。
また、株は世襲制で特権的に引き継がれていったというよりは、実態はそれなりに自由に売買されていたので、商売への新規参入に全く自由がなく、競争が阻害されていたということではなかったと考えられます。

(金融リテラシーサポート部 石田 慈宏)

<先生のための「夏休み経済教室」>活動レポート

8月に開催した<先生のための「夏休み経済教室」>について、活動レポートをまとめました。
当日の様子や、ご登壇いただいた先生方の資料のダウンロード(共催の経済教育ネットワークのWebサイトより)もできますので、
是非皆様ご覧くださいませ。

【東証マネ部!】今月の注目記事!!

メルマガを毎月発行している私も「わかりやすい。いつか先生方にご紹介したい」と感じていた本について、東証マネ部の記事にわかりやすく紹介されていますので
今月はその記事をご紹介したいと思います。

文筆家・書評家の三宅香帆さんが選んだお金に関する本を紹介する連載の夏休み版として8月に掲載しました。
高校生とありますが、簡単すぎるということはなく、”金融教育最先端のアメリカで、高校生に教える経済学の知識”をまとめた教科書ですので、経済のことをきちんと理解したいという大人にもおすすめです。
「知っておきたい経済用語集&索引」も載っているので、学校での活用にも役立つかもしれません。

同じシリーズで”投資の教科書”も掲載しています。

今回筆者は日本語の翻訳版を出版するにあたり、現在の世界情勢や日本の状況を反映し、より実用的な本とさせるため改訂しています。
また「8歳で投資を始めた」という投資経験豊富な筆者が「リスクのない投資はない」と明言し、だからこそ伝えたいことをまとめている点も非常に参考になります。
そして、本書は投資の知識を伝えるだけでは終わりません。
投資を始めようとする人にまず著者が勧めることは、投資の目標と、投資にかけられる期間を決めて紙に書くことだそうです。
本書は、長期的に自分の資産をどうしたいのか、ひいては人生をどのように過ごしていきたいのかを考える良いきっかけになるでしょう。

最近の株式市場の動向

9月になっても、まだまだ、毎日、暑い日が続きますね。暑さ寒さも彼岸までと言われますが、最近はそうとも言えないのかもしれません。引き続き、体調管理にお気を付けてお過ごしください。

今回は先月8月以降の東京株式市場の動向について、簡単に市況を振り返ってみます。

2023年の8月の株式市場は、月の初めは、米国の国債の評価が格下げとなったことを嫌気して、東京市場でも急落して始まりました。
その後、国内の主要企業の決算が好調なことや、インバウンド需要の増加期待などから、株価が急に反発するなど、値動きの大きい展開となりました。

中旬から月末にかけては、中国での不動産業界の混乱や経済指標の悪化に加え、米国での利上げが長期化するとの観測が再び強まったことなどから、
また大きく株価が下落しましましたが、すぐに米国での利上げ観測が遠のいたことなどから買われて底堅く推移し、TOPIXは前月末終値を小幅に上回って終わりました。
9月になっても、米国株式市場の値動きを受けて、東京市場でも値動きの大きな相場展開が続いています。

先月8月1か月間について、TOPIXで見た上昇率は+0.41%、
上昇した主な業種は、海運、鉱業、石油株で、下落した主な業種は、精密機器、電気機器、空運株でした。

また、昨年末からの比較では、8月末のTOPIXで見た上昇率は+23.3%、
上昇した主な業種は、鉄鋼、鉱業、卸売株で、下落した業種はありませんでした。

次号以降も、学校の授業等で参考にしていただけたら幸いです。