インフラファンド連載特集
第6回
太陽光発電所の最新動向2026
旗艦物件「CS益城(ましき)町発電所」を歩く
高度な運用体制と防犯・防災対策の最前線
~カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人~
東京証券取引所のインフラファンド市場は、2015年4月に創設され、2026年4月末時点では5銘柄が上場しており、そのすべてが太陽光発電設備といった再エネ発電設備を投資対象にしています。 今回はインフラファンドが保有する太陽光発電設備を実際に訪れ、具体的にどのような設備で構成されているのか、太陽光発電事業における現状の課題と今後求められる対策などを含めて解説します。
訪れたのは、カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(9284)が保有するCS益城町発電所。お話を聞いたのは、同発電所の保守管理を行うカナディアン・ソーラーO&Mジャパン O&Mフィールドテクニシャンの中嶋隆浩氏と德永和範氏、同投資法人の執行役員の中村博信氏です。
15,800世帯の電力を賄う
東京ドーム18個分のメガソーラー
——本日は熊本県益城町(ましきまち)にやってきました。見渡す限りのソーラーパネルが圧巻ですが、まずはこの発電所の規模感から教えてください。
- 中嶋氏
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「CS益城(ましき)町発電所」へようこそ。ここは2017年6月に運転を開始したメガソーラーです。敷地面積は約84.6ヘクタール、わかりやすく言えば東京ドーム約18個分という広大な土地に、14万9,958枚のパネルが整然と並んでいます。発電出力はパネル容量ベース(DC)で約47.7MW、系統連系出力ベース(AC)で34.0MWに達します。これは一般家庭の年間消費電力に換算して、約1万5,800世帯分を賄える規模に相当します。

——これほどの規模になると、地域にとっても非常に重要なインフラとしての役割を担っているのですね。立地条件についても教えてください。

中村氏 益城町周辺は、阿蘇外輪山の南西部に位置し、年間を通じて非常に日照条件に恵まれています。気象庁のデータを見ても、熊本県の年間日照時間は約2,000時間前後で推移しており、全国平均の約1,900時間を安定して上回っています。当投資法人が開示している「月次発電実績」でも、シミュレーションによる想定値を安定して上回る達成率を記録しており、太陽光発電にとって理想的なエリアであるといえます。
- 中村氏
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益城町周辺は、阿蘇外輪山の南西部に位置し、年間を通じて非常に日照条件に恵まれています。気象庁のデータを見ても、熊本県の年間日照時間は約2,000時間前後で推移しており、全国平均の約1,900時間を安定して上回っています。当投資法人が開示している「月次発電実績」でも、シミュレーションによる想定値を安定して上回る達成率を記録しており、太陽光発電にとって理想的なエリアであるといえます。
——実際に歩いてみると、送電設備も非常に大きいですね。
- 中嶋氏
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そうですね。大きな特徴として、九州電力との責任分界点(開閉所)が発電所の敷地から少し離れた場所にあります。そこから新たに建設された約5kmの送電ルートを通って九州電力の変電所へ送る仕組みです。これほどの規模になると特別高圧(66kV)での送電となるため、既存の鉄塔インフラとの整合性をとる必要があり、鉄塔17基を介して接続されています。
——離れた場所にある責任分界点までの管理も大変そうですね。
- 中嶋氏
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側がダウンした際、遠隔での復旧ができないケースもあります。その場合は現場まで急行し、九州電力と連絡を取りながら手動で遮断器を操作して復旧させます。管理の負担はありますが、安定供給のためには欠かせない業務です。
「垂直統合モデル」がもたらす
メーカー系投資法人独自の強み
——パネルのスペックについても教えてください。
- 中村氏
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当発電所に設置されているのは、カナディアン・ソーラー製の多結晶シリコンモジュール「CS6Xシリーズ」です。当時の高水準な大型モジュールであり、高い信頼性を誇ります。カナディアン・ソーラーは、ブルームバーグのリサーチ部門である「Bloomberg NEF」が公表する格付けで最高位の「Tier1」に長年選出されているモジュールメーカーであり、世界累計出荷量は157GW(2024年実績)を超えています。製造メーカーがスポンサーであることは、投資法人にとって非常に大きなアドバンテージです。
——具体的には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
- 中村氏
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「開発」から「設計・施工」、そして現在の「保守管理(O&M)」までをグループ内で一貫して手掛ける「垂直統合モデル」の強みが発揮されます。他社の場合、施工業者から管理会社へは書類上の引き継ぎのみになりがちですが、我々の場合は設計思想そのものをエンジニア同士で直接共有できます。開発時に地域の方からいただいたご要望や現場特有の懸念点も、現在のO&Mチームが正確に把握しており、問題が発生する前の「予防保守」がスムーズに行えるのです。
——メーカーだからこそ、技術的な矛盾を避け、最適なメンテナンスができるということですね。
- 中村氏
-
その通りです。また、パネルの経年劣化についても、当発電所のモデルは初年度2.5%未満、2年目以降は年0.7%未満の出力低下率を前提に25年間の出力保証を行っています。ちなみに最新モデルでは30年保証となっており、日進月歩で進化しています。当発電所のような既存施設についても、将来的な「リパワリング(高効率パネルへの交換)」の可能性は常に検討の遡上に載せています。
——「過積載」についても工夫されていると伺いました。
- 中嶋氏
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はい。AC出力34.0MWに対し、DC出力を47.7MWに設定しています。これによって、日射量の少ない朝夕や曇天時でもパワーコンディショナ(PCS、直流(DC)の電気を交流(AC)の電気に変換する装置)の最大能力に近い電力を引き出すことができ、1日を通じた発電量の底上げを実現しています。この設計と益城町の豊富な日射量が組み合わさることで、非常に高い投資効率を生み出しています。

右【特別高圧監視室】発電した膨大な電気を電力会社の送電網に安全に送り出すための「管制塔」の役割を果たします
空港至近の制約を技術で克服
AI監視と徹底した現場管理の融合
——保守管理の現場についても詳しく見せてください。どのような点検を行っているのでしょうか。
- 德永氏
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以前はドローンを活用して全数点検を行い、異常過熱(ホットスポット)などを検知していました。しかし、当発電所は熊本空港に非常に近いため、近年は航空法による飛行制限がさらに厳しくなり、ドローンを飛ばすことが事実上不可能になりました。そのため現在は、より地道で精緻な点検手法に移行しています。
——ドローンの代わりとなる手法とは?
- 德永氏
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専用の点検装置「ソラメンテ」を用いたストリング(複数枚の太陽光パネルを繋いだ単位)ごとのチェックや、「IV測定(電流・電圧特性試験)」を全8,331のストリングに対して実施しています。監視装置(SCADA)によってDC側の電流値を接続箱単位で常時計測しており、そのデータは本社の統合監視システムにリアルタイムで送られます。オペレーターによる細かな遠隔監視と、我々現場スタッフによる物理的な点検を組み合わせることで、パネルの異常を確実に捕捉しています。
——最新技術といえば、防犯カメラもあちこちに設置されていますね。
- 中嶋氏
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はい。特に昨今は、太陽光発電所を狙った金属盗難が深刻な社会問題となっています。当発電所でも、AI監視システムを導入して防犯体制を強化しています。カメラの映像から「人」「バイク」「車」をAIが自動的に識別し、不審な侵入を検知すると即座に私たちのスマートフォンや本社の管理画面にアラートを飛ばします。
——夜間の監視はどうされているのですか。
- 中嶋氏
-
夜間でも赤外線センサーが扉の開閉や物理的な侵入を検知します。センサーが反応すると、PTZ型(パン・チルト・ズーム)カメラが自動的にそのエリアを指向・ズームし、現場の状況を捉えます。同時に、現場では「赤色灯」が点灯し「警報メッセージ」が音声で発報されるため、侵入者に対して強力な威嚇効果を発揮します。また、物理的な対策として、ケーブル類の多くを地下に埋設することで、抜き取りを困難にする工夫も施しています。
- 德永氏
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AI監視システムと赤外線センサーを組み合わせて運用していますが、赤外線センサーのみのポイントでは夜中に餌を食べに来るシカやイノシシの集団を「人」と誤認してアラートを出してくることもあります。でも、それだけ感度が高いということは、防犯上非常に心強いことです。
除草剤不使用と地域住民との共生
「割れ窓理論」に基づく防犯の極意
——広大な敷地を歩いていると、地面に雑草がほとんどなく、非常にきれいに管理されているのがわかります。
- 中嶋氏
-
ありがとうございます。実は、メガソーラーの運営において最大の敵は、故障ではなく「雑草」と言っても過言ではありません。雑草が伸びてパネルに影を作れば発電効率が落ちますし、放置すれば故障や火災の原因にもなります。しかし、ここでは約64万平方メートルという広大な土地でありながら、環境への配慮と地表面の安定化のため、除草剤や防草シートを一切使用していません。
——これだけの広さをすべて手作業で管理しているのですか?
- 中嶋氏
-
はい。基本的には外注の協力会社さんにお願いしていますが、実はこの「除草管理」こそが地域共生の鍵になっています。除草作業に従事してくださっているのは、地元の農家さんやリタイアされた方々です。地域の方々の手で発電所を守っていただいている形です。
——地域住民の方が日常的に敷地に関わっているのですね。
- 中村氏
-
ええ。運用開始当初から外周道路を地域住民の方に開放しており、ウォーキングを楽しまれている方もいらっしゃいます。巡回スタッフは、ウォーキング中の方に積極的に挨拶を交わすようにしています。地域の方と「顔見知り」になることで、不審者が入り込みにくい空気を作る。これは防犯上の大きなソフト対策です。
——「割れ窓理論」に近い考え方でしょうか。
- 中嶋氏
-
まさにその通りです。正門周辺や外周道路の清掃、除草を徹底し、常に「人の目が行き届いている」ことを視覚的に示す。これが犯罪意欲を削ぐ最も効果的な方法です。巡回ルートや時間もあえてランダム化し、下見に来た者に隙を与えないようにしています。
- 德永氏
-
地元の方からは「ここができる前はよくワラビ取りに来たよ」なんて話も聞きます。地域に愛され、必要とされる施設であり続けることが、結果として長期の安定運用に繋がると確信しています。
熊本地震と豪雨の教訓を反映
20年間の長期安定稼働を支えるインフラ
——益城町といえば、2016年の熊本地震の記憶も鮮明です。防災面での対策はいかがでしょうか。
- 中村氏
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震災時、この発電所はまだ土木工事中でしたが、幸いなことに大きな被害はありませんでした。それ以降、架台や基礎の設計については、非常にシビアに評価を行っています。架台形式には「スクリュー杭」を採用しています。コンクリート基礎を打たずに巨大なネジのような杭を地面に打ち込む方式で、自然の地圧を活かして強固に固定しています。これは将来の撤去時に自然の負荷を最小限に抑える環境配慮型の工法でもあります。
——近年多発するゲリラ豪雨など、水害への備えはどうでしょう。

下流の河川へ一気に流れ出さないように水量をコントロールするための防災設備です。
中嶋氏 敷地内には巨大な「調整池」を設けています。大雨が降った際、雨水を一気に下流へ流すと川の氾濫を招く恐れがあります。そこで、この調整池で一時的に水を貯め、時間をかけて少しずつ排水する役割を担っています。以前、時間雨量80mmを超える猛烈な雨が降った際も、この池が満水近くまで貯留して機能を果たし、下流の安全を守ることができました。特高発電所として、自治体の厳しい開発許可基準をクリアした設計になっています。
—— 気象の変化に対しても、非常に高度な対応をされていますね。
- 德永氏
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九州エリアでは「出力制御(抑制)」が大きな課題ですが、当発電所ではすでに「オンライン制御装置」を導入済みです。電力会社からの指令をインターネット経由で自動的に受け取り、PCSの出力を絞ることで、オフライン(手動停止)に比べて発電機会の損失を最小限に抑えています。これにより、分配金の原資となる売電収益を安定させています。
左【気象観測塔】
気象の観測を行います。24時間体制で日射量、風向、風速、温度を計測しています
右【気象観測塔内の端末】
気象観測塔で計測したデータをモニタリングするための機器
——最後に、今後の展望について教えてください。
- 中村氏
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FIT制度が始まってから10年以上が経過し、太陽光発電所は「造る」段階から「いかに安定して使い続けるか」という管理の時代に入りました。メーカー系投資法人として、テクノロジーを最大限に活用し、既存施設の効率化を図る。そして、地域社会の一員として、20年、それ以上の長期にわたってクリーンエネルギーを供給し続ける。アセットマネジメントとO&Mが一体となって、インフラ資産の価値を最大化していきたいと考えています。
——本日は現場の熱意と技術力の高さを肌で感じることができました。ありがとうございました。
CS益城町発電所 施設概要
| 所在地 |
熊本県上益城郡益城町大字上陳字高野965-1他30筆 |
|---|---|
| パネル出力 |
47,692.62kW(約47.7MW) |
| パネル設置数 |
149,958枚 |
| 発電出力 |
34,000.00kW(34.0MW) |
| 買取価格 |
36円/kWh(消費税別) |
| 調達期間満了日 |
2037年6月14日 |
| 買取電気事業者 |
九州電力株式会社 |
| オペレーター |
ティーダ・パワー01合同会社(特別目的会社) |
| O&M業者 |
カナディアン・ソーラーO&Mジャパン株式会社 |
| EPC業者 |
MAETEL CONSTRUCTION JAPAN 株式会社 |
| パネルメーカー |
カナディアン・ソーラー社 |
| 稼働初年度想定設備利用率 |
13.63%(想定年間発電量56,950,000kWh ÷ [パネル出力 47,692.62kW × 8,760時間] に基づく算出) |
| 土地面積 |
846,626㎡(約85ha) |
| 土地の権利形態 |
地上権(土地賃借) |
※設備利用率については、投資法人が公表している想定年間発電量(P50ベース:56,950,000kWh)とパネル出力から算出した値を補完しましたので、数値等ご確認いただけると幸いです。




