ESG情報開示枠組みの紹介

国際統合報告評議会(International Integrated Reporting Council,IIRC)国際統合報告フレームワーク

2022年8月1日、IIRCとSASBの合併により2021年6月に設立されたValue Reporting Foundation(VRF)は、ESG情報の国際的な開示基準を作成するIFRS財団に総合されました。その詳細及び「IFRSサステナビリティ開示基準」については以下をご覧ください。
際会計基準(IFRS)財団「IFRSサステナビリティ開示基準」

IIRCからのオンラインセミナー

上場企業の皆様に、 ESG情報開示を行う際のIIRCの活用方法について、IIRCはJPXと共同で以下のオンラインセミナーを提供しています。

タイトル 内容 参考資料 リンク
1.国際統合報告評議会(IIRC)のご紹介(19分)
IIRCのミッションや歴史、主な活動に加えて、統合報告の有効性及び今後の企業報告の行方 PDF セミナーを視聴
2.統合報告および統合報告フレームワークについて(18分) 統合報告のメリット、統合報告フレームワークの概念、IIRCからのリソース PDF セミナーを視聴

IIRCとは

IIRCとはInternational Integrated Reporting Council(国際統合報告評議会)の略称で、財務資本の提供者が利用可能な情報の改善、効率的に伝達するアプローチ確立等を目指して、2010年にA4S(The Prince’s Accounting for Sustainability Project)とGRI(Global Reporting Initiative)によって設立された、規制者、投資家、企業、基準設定主体、会計専門家及びNGOにより構成される国際的な連合組織です。

国際統合報告フレームワークとその目的

IIRCは、2013年に、統合報告書の作成に係る指導原則や内容要素をまとめた「国際統合報告フレームワーク (The International <IR> Framework)」を公表しました。以降、日本をはじめ、世界で統合報告の実践が進んでいます。なお、2020年2月に、フレームワークの改定を検討していることが発表されました。

国際統合報告フレームワークの改定について(IIRCウェブサイト)icon-block

国際統合報告フレームワークの冒頭では、統合報告の目的を、「統合報告は、企業報告に関して、よりまとまりのある効率的なアプローチを促すとともに、財務資本の提供者が利用可能な情報の質を改善することによって、より効率的で生産的な資本配分を可能とする」と述べており、「統合報告書の主たる目的は、財務資本の提供者に対し、組織がどのように長期にわたり価値を創造するかを説明することです。統合報告書は、従業員、顧客、サプライヤー、事業パートナー、地域社会、立法者、規制当局、及び政策立案者を含む、組織の長期にわたる価値創造能力に関心を持つ全てのステークホルダーにとって有益である」としています。

国際統合報告フレームワークの英語版、日本語版ともにこちらicon-block

国際統合報告フレームワークの特徴

  1. 統合思考(Integrated Thinking)
    国際統合報告フレームワークでは、様々な情報が統合して開示されるだけでなく、報告書作成のプロセスを通じて「統合思考(組織内の様々な事業単位及び機能単位と、組織が利用し影響を与える資本との間の関係について、組織が能動的に考えること)」が組織内に浸透することで、企業の行動が変化し、企業価値が向上することを目的としています。
  2. 指導原則(Guiding Principles)
    国際統合報告フレームワークでは、報告書作成と表示の基礎となる「指導原則」(戦略的焦点と将来志向、情報の結合性、ステークホルダーとの関係性、重要性、簡潔性、信頼性と完全性、首尾一貫性と比較可能性)を設定しています。
  3. 内容要素(Content Elements)
    国際統合報告フレームワークでは、報告書に含まれるべき情報を「内容要素」として示しています。各内容要素は、本来的に相互に関連しており、相互排他的なものではありません。また、これら相互の関係と、中長期的な価値創造プロセスを示しているのが以下に示す「価値創造プロセス」の図です。

「内容要素」及び「価値創造プロセス」の図

  • 組織概要と外部環境:組織が何を行うか、組織はどのような環境において事業を営むのか。
  • ガバナンス:組織のガバナンス構造は、どのように組織の短、中、長期の価値創造能力を支えるのか。
  • ビジネスモデル:組織のビジネスモデルは何か。
  • リスクと機会:組織の短、中、長期の価値創造能力に影響を及ぼす具体的なリスクと機会は何か、また、組織はそれらに対しどのような取組を行っているか。
  • 戦略と資源配分:組織はどこを目指すのか、また、どのようにそこに辿り着くのか。
  • 実績:組織は当該期間における戦略目標をどの程度達成したか、また、資本への影響に関するアウトカムは何か。
  • 見通し:組織がその戦略を遂行するに当たり、どのような課題及び不確実性に直面する可能性が高いか、そして、結果として生ずるビジネスモデル及び将来の実績への潜在的な影響はどのようなものか。
  • 作成と表示の基礎:組織はどのように統合報告書に含む事象を決定するか、また、それらの事象はどのように定量化又は評価されるか。
価値創造プロセス

価値創造プロセス

包括的な企業報告の実現を目指す共同声明

非財務情報の領域における市場の混乱の低減とより幅広い賛同を得るために、概念が類似している点を特定する目的で、2014年にIIRCの招集により、Corporate Reporting Dialogue(CRD)が立ち上がりました。CRDは、非財務情報に係るグローバルな基準やフレームワークの設定団体によって構成されています。2020年にCRDの活動は大きく躍進し、統一化された企業報告システムへの共同コミットメントを示す共同声明が2020年9月に公表されました。

Statement of Intent to Work Together Towards Comprehensive Corporate Reportingicon-block
共同声明からの図表:サステナビリティ関連開示基準

共同声明からの図表:サステナビリティ関連開示基準