機関投資家のESG投資

野村アセットマネジメント株式会社

野村アセットマネジメントについて

2019年12月に創立60周年を迎えた野村グループの資産運用会社です。当社を含む野村グループのアセットマネジメント部門の運用資産残高は55.6兆円(2019年12月末現在)、個人のお客様から年金基金をはじめとした国内外の機関投資家等のお客様まで、多様な資産運用のニーズに対応しています。
「すべてはお客様のために」。当社はこの想いを胸に東京・ロンドン・ニューヨーク・シンガポール・クアラルンプール・香港などの各拠点が連携して、世界中のお客様の期待に応えていきます。

責任投資の方針・体制

当社は独立性の高い運用調査の責任者で構成される「責任投資委員会」のもと、スチュワードシップ活動を全社的に推進しています。エンゲージメント(建設的な対話)、議決権行使、ESGインテグレーション等に関する方針を策定し、運用調査の現場における活動を監督しています。
また責任投資諮問会議を設置し、特に利益相反を伴う議決権行使等のスチュワードシップ活動に関して、お客様の利益が損なわれることなく意思決定されるよう監視する体制を築いています。

責任投資の方針・体制

責任投資における当社の強みは4点です。

  1. 長期にわたる責任投資への取り組み実績と蓄積された知見
  2. 時代の要請・変化を先取りし、かつ幾度かの改革を経て構築された強固な組織体制
  3. 多様性に富んだグローバルな人材を基盤とした調査・分析力
  4. 厳格な利益相反管理のために「議論を尽くす」姿勢
 
(参考)当社の責任投資への取組みのご紹介icon-block
(参考)責任投資レポートicon-block
 

ESG投資の方針・体制

ESG課題の解決に向けた取り組みが、インベストメント・チェーンの好循環を支えるうえで非常に重要であると考えています。
当社は2019年3月に「ESGステートメント」を策定・公表しました。当ステートメントは、当社のESG活動の方向性、及び環境や社会のリスクへの対応に関して各ステークホルダーと認識を共有しつつ、持続可能な環境・社会の実現を目指した内容になっています。

ESG投資の方針・体制

投資先企業の持続性、企業価値にとって重要な要素であるESGは運用意思決定においても必要不可欠な存在となってきています。当社ではこれまでに、株、債券、マルチアセットと幅広い資産クラスで運用プロセスにおけるESGの考慮を進めてきています。
ESGに関する調査分析については、責任投資調査部のESGスペシャリストに加え、企業調査部のアナリスト、債券部門のクレジットアナリストが連携し、実効性の高い体制を構築しています。また海外拠点の運用者やアナリスト、外部イニシアティブ等とも連携し、グローバルにESG投資を実践しています。

 
(参考)ESGステートメントicon-block
 

議決権行使の方針

当社は投資先企業の株主総会において、取締役選任をはじめとする様々な議案に対して議決権を行使しています。
行使に際しては議決権行使ガイドラインに則り規律ある行使を心掛けています。また定性判断を要する議案については、責任投資委員会において徹底した議論を行い、企業価値向上や実効性の高いコーポレートガバナンスの観点で賛否を決定しています。

議決権行使の方針

当社の議決権行使プロセスの特長は以下のとおりです。

  • 規律:議決権行使ガイドラインに則って議案を判断
  • 堅牢性:責任投資委員会を中心とする堅牢な意思決定プロセス
  • 徹底的な議論:事務局案の追認ではなく責任投資委員会が最終的な賛否を判断
  • 利益相反の管理:責任投資諮問会議によるリアルタイムの監視
 
(参考)議決権行使ガイドラインおよび議決権行使結果icon-block
 

どのようなESG情報をどのように投資判断に活用しているか

企業の皆様が開示するESG情報は、エンゲージメントや議決権行使、運用のモニタリングや顧客レポーティング、そして運用の意思決定など我々運用会社の様々な活動、取り組みに活用されています。しかしながらそれらのベースとなるのは、個々の投資先企業に対する正しい理解です。その為に当社は日本企業においては独自のESGスコアを構築し、投資先企業のESG上の強み・弱みを把握することに努めています。
当社独自のESGスコアは、環境・社会・ガバナンスに加えSDGsも加味することで、リスクとオポチュニティの双方において投資先企業のESGを評価する点に特徴があります。
例えば気候変動においては、温室効果ガスに関する定量情報等を参考に同業他社比で気候変動に係る物理的リスクや移行リスクの大小を把握するだけでなく、その企業の持つ環境技術等によって将来的なビジネスの機会や差別化要因があるかどうかも評価します。また人的資本においては、従業員に関する定量情報等を参考に、労働問題に関するリスクの有無の把握に加えて、その企業の人的資本を有効に活用する取り組み等も分析し、将来のビジネスの成長評価に繋げることもしています。
そして公開情報をもとに得られた分析結果を踏まえ、企業の皆様との対話に臨み、実質的な取り組みに関する情報収集、評価の見直しを行っています。

どのようなESG情報をどのように投資判断に活用しているか

このように分析された企業のESG情報は、様々な資産クラスでの運用プロセスへの統合、インテグレーションに活用されています。株式では当社独自のESGスコアを付与していますが、債券でも独自のESGスコアを開発し運用に応用しております。またマルチアセットでもESG運用を開始しており、ESGの開示情報が活用される対象資産は拡大してきています。
その使い方ですが、具体的に株式の場合では、個別銘柄の投資意思決定を下す際、企業のファンダメンタルズ分析に加え、ESGに関する評価も必ず行い、その企業の持続的成長も踏まえた上で投資判断を下しています。もし調査分析の過程でESG課題が明らかになった場合は、投資判断を保留、もしくは継続保有した上で企業との対話、エンゲージメントで問題解決にあたります。場合によっては議決権行使に反映することもあります。株式の場合は、エンゲージメント、議決権行使、ESGインテグレーションといった一連のプロセスの中でESG情報を活用しています。

日本株運用におけるESGインテグレーション

企業とのエンゲージメントの方法、トピック、頻度など

日本企業については、保有状況などを踏まえてエンゲージメントの対象企業を選定しています。時価総額ベースで当社の日本株投資額の約8割以上をカバーしています。この中から、ESG課題や重点テーマを踏まえて優先順位を設定し、エンゲージメントを実施しています。近年は投資先企業から対話のご要望をいただくケースが増えています。

企業とのエンゲージメントの方法、トピック、頻度など

当社はエンゲージメントのテーマを、①事業戦略、②財務戦略、③環境・社会問題への取り組み(E・S)、④コーポレートガバナンス(G)、⑤開示・対話の5つに分類しています。実際のエンゲージメントでは、議論の中で挙がったテーマについて投資先企業とESG課題を共有するとともに、投資家としての意見を企業にお伝えしています。
当社は各テーマに対する具体的なゴールを設定し、その実現に至るマイルストーンを管理することにより課題解決の進捗状況を把握する方法を採用しています。マイルストーンは5段階、期間は3年を区切りとしています。ゴールと時間軸を明確化することにより、PDCAを効果的に機能させることができると考えています。

PDCA進捗管理プロセス
PDCA進捗管理プロセス

上場会社のESG情報開示の現状をどうみているか、開示してほしい情報

当社は多くのESG課題の中で、気候変動問題、自然資本の問題、社会的責任に係る問題を特に重要な課題と位置付けています。またSDGsに示された様々な環境・社会課題の解決も重視しています。投資先企業には、これらの課題解決に貢献する事業の取り組みが、経営の長期戦略に適切に織り込まれることを期待しています。またその方針、目標設定、具体的な活動が明らかになるよう、よりよい情報開示を望んでいます。

議決権行使に際しては、招集通知を含む株主総会関連資料、独立役員届出書、コーポレートガバナンス報告書等を参照しています。近年は株主総会関連書類の内容が充実しており、スムーズな判断ができるようになってきたと実感しています。引き続き分かりやすい情報開示をお願いいたします。

上場会社へのメッセージ

当社がESG投資を進めるうえで、投資先企業の統合報告書やサステナビリティ報告書に記載されている説明やデータは、財務、非財務ともに欠かすことのできない重要な投資情報です。ここ数年における各報告書の内容の充実化と高度化には著しいものがあります。企業としての実力もさることながら、特に各報告書作成関係者の並々ならぬご尽力の成果と受け止めており、深く感謝いたします。
投資先企業との直接対話による相互理解の深化こそが、企業価値向上と持続的な成長につながると信じて、日々の運用調査活動を行っています。これからもエンゲージメントでお世話になる機会が多々あると思います。また、これまでお会いできていない企業からのお声掛けに対しても積極的に対応いたします。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。