機関投資家のESG投資
野村アセットマネジメント株式会社
野村アセットマネジメントについて
1959年に設立された野村グループの資産運用会社です。当社を含む野村グループのアセットマネジメント部門の運用資産残高は108.4兆円(2025年12月末現在)、個人のお客様から年金基金をはじめとした国内外の機関投資家等のお客様まで、多様な資産運用のニーズに対応しています。
当社は、「最高の付加価値の創造」、「高度な専門性の追求」、「信頼の獲得と社会への貢献」を企業理念に掲げ、お客様や投資先企業とともに、投資の好循環(インベストメント・チェーン)を生み出すことにより、持続可能な社会の実現を目指していきます。
責任投資の方針・体制
当社は独立性の高い運用調査の責任者で構成される「責任投資委員会」のもと、スチュワードシップ活動を全社的に推進しています。エンゲージメント(建設的な対話)、議決権行使、ESGインテグレーション等に関する方針を策定し、運用調査の現場における活動を監督しています。
また責任投資諮問会議を設置し、特に利益相反を伴う議決権行使等のスチュワードシップ活動に関して、お客様の利益が損なわれることなく意思決定されるよう監視する体制を築いています。
責任投資における当社の強みは4点です。
- 長期にわたる責任投資への取り組み
- 時代の要請・変化を先取りした体系的かつ組織的なESGに対する取り組み
- グローバルでダイバーシティ(多様性)に富んだ運用・調査体制
- 強固な組織体制下で多様な意見を基にした「議論を尽くす」姿勢
ESG投資の方針・体制
2019年3月、当社は「ESGステートメント」を公表しました。同ステートメントでは、当社のESGに関する活動の方向性や環境(E)や社会(S)などのリスクに対して当社がどのように対応していくかについて示しただけではなく、その内容をステークホルダーと共有することで、持続可能な豊かな社会の実現」を目指しています。
当社が目指す姿は、「持続可能な豊かな社会、すなわち豊かな自然環境が保全され、多様な価値観を持つ人的資本が活用され、技術革新により経済が発展し、そして人権が尊重され人々がウェル・ビーイングな状態で活躍する社会であり、それはESG課題が解決されSDGs(持続可能な開発目標)が達成された社会」です。また、当社ではこうした社会の達成のためのESG課題の解決へ向けた取組みが、インベストメント・チェーン(投資の好循環)を支えるうえで重要であると考えています。企業がESG課題に係るリスクを適切に管理したうえで、ESG課題の解決を新たなビジネス機会と捉えて適切に経営戦略に反映することが重要であり、これが持続的な企業価値向上と投資リターン拡大に必要不可欠と考えます。
さらに、当社は責任ある投資家として投資先企業に当社が考える「望ましい経営」を求めるとともに、当社自身もESGを重視した事業運営を進めていきます。
投資先企業の持続性、企業価値にとって重要な要素であるESGは運用意思決定においても必要不可欠な存在となってきています。当社ではこれまでに、株、債券、マルチアセットと幅広い資産クラスで運用プロセスにおけるESGの考慮を進めてきています。
ESGに関する調査分析については、責任投資調査部のESGスペシャリストに加え、企業アナリスト、クレジットアナリストが連携し、実効性の高い体制を構築しています。また海外拠点の運用者やアナリスト、外部イニシアティブ等とも連携し、グローバルにESG投資を実践しています。
議決権行使の方針
当社は投資先企業の株主総会において、取締役選任をはじめとする様々な議案に対して議決権を行使しています。
行使に際しては議決権行使ガイドラインに則り規律ある行使を心掛けています。また定性判断を要する議案については、責任投資委員会において徹底した議論を行い、企業価値向上や実効性の高いコーポレートガバナンスの観点で賛否を決定しています。
当社の議決権行使プロセスの特長は以下のとおりです。
- 体系的かつ継続的な働きかけ
エンゲージメントと合わせて「望ましい経営のあり方」の実現を目指す。
- 実効的かつ堅牢なプロセス
責任投資委員会における徹底的な議論+責任投資諮問会議がリアルタイムで利益相反を監視。
- 高い水準の説明責任
全ての議案について賛否の理由を開示。特に説明を要する議案については詳細に。
- 反対要件の列挙にとどまらない基準
取り組みが遅れている場合に反対するだけでなく、平均的な企業により高い水準を目指すよう働きかける基準を導入。
どのようなESG情報をどのように投資判断に活用しているか
企業の皆様が開示するESG情報は、エンゲージメントや議決権行使、運用のモニタリングや顧客レポーティング、そして運用の意思決定など我々運用会社の様々な活動、取り組みに活用されています。しかしながらそれらのベースとなるのは、個々の投資先企業に対する正しい理解です。その為に当社は日本企業においては独自のESGスコアを構築し、投資先企業のESG上の強み・弱みを把握することに努めています。
当社独自のESGスコアは、環境・社会・ガバナンスに加えSDGsも加味することで、リスクとオポチュニティの双方において投資先企業のESGを評価する点に特徴があります。
「環境」では、企業が気候変動に関する移行リスクや物理的リスクを管理し、その対応を経営戦略に盛り込むと同時に、経営陣によるコミットメントが示されているか、などを評価します。項目としては、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」に沿った開示などがあり、統合報告書やホームページの資料を基に分析し、評価を行います。自然資本・その他の環境評価項目としては、廃棄物管理、河川・海洋資源の保全や海洋汚染防止を含む生物多様性に関する項目などがあります。
「社会」では、企業の内部と外部におけるリスクおよびその対応に分かれます。前者は、従業員の人権や人的資本の活用に関する評価などが、後者は製品・サービスの品質に関する課題やサプライチェーン・マネジメントなどに関連しています。最近は、世界的に人権問題への取組みが注目されており、特に日本企業の場合、国内外の拠点におけるサプライチェーン・マネジメント管理における評価を重視しています。
「ガバナンス」では、取締役会の構成、社外取締役の独立性、指名・報酬に関する委員会の設置状況など、形式をチェックする評価項目が複数あります。一方で、経営トップとの対話、後継者計画の策定など定性的な項目に関する評価もあり、長年にわたり企業を深く調査分析している当社の企業アナリストならではの強みが評価に反映されるようにしています。
そして公開情報をもとに得られた分析結果を踏まえ、企業の皆様との対話に臨み、実質的な取り組みに関する情報収集、評価の見直しを行っています。
実際の運用においてESGの要素を運用プロセスに組み込んで投資判断に活用する、いわゆるインテグレーションの取組みは重要です。財務的な経営パフォーマンスと非財務情報であるESGへの対応との間には密接な関係があり、相互に影響するものであると考えているためです。野村アセットマネジメントでは投資先企業に対して独自のESG評価を行い、投資判断に活用しています。企業を評価する財務情報などのファンダメンタルズ分析を土台として、ESGを含めた非財務情報の評価を効果的に運用プロセスに組み込むために、株式運用と債券運用の双方で、当社独自のESG評価を行っています。こうした手法を運用へ統合することは、ダウンサイドリスクの低減のみならずリターンの向上のために必要不可欠な手段となっています。ESG評価は日本企業だけではなく、欧米先進国やアジア・エマージング諸国の企業も対象の範囲としています。気候変動や人権などのグローバルな共通テーマに加え、個別産業・企業ごとのESG課題を抽出し、様々なリサーチや複数の外部評価情報を活用しながら、当社独自のESGスコアを付与し、運用に活用できる体制を構築しています。
企業とのエンゲージメントの方法、トピック、頻度など
日本企業については、当社の保有額、投資先企業からみた保有比率などを踏まえてエンゲージメントの対象企業を選定しています。時価総額ベースで当社の日本株投資額の約8割以上をカバーしています。この中から、ESG課題や重点テーマを踏まえて優先順位を設定し、エンゲージメントを実施しています。投資先企業から対話のご要望をいただくケースも多くあります。
当社のエンゲージメント活動は、責任投資委員会にて設定された「運用における責任投資の基本方針」 「エンゲージメントの重点テーマ」に基づき推進されます。重点テーマは、事業・財務戦略から環境・社会・ガバナンスなどのESG課題まで多岐にわたる点が特徴です。
同基本方針や重点テーマに基づき、個別企業へのエンゲージメントが実施されます。時価総額等を勘案して選定したエンゲージメント重点対象企業「重点350社」に対して、個社ごとにエンゲージメント活動方針(エンゲージメント・ゴール)を設定します。アナリスト、ESGスペシャリスト、ポートフォリオマネジャーが参加するエンゲージメント推進会議にて多角的な検討を行い、ゴール設定を行います。
エンゲージメント・ゴール設定後、担当アナリスト、ESGスペシャリストによってエンゲージメントが進められます。エンゲージメント進捗状況はマイルストーンでモニタリング管理を行い、進捗が乏しいゴールに対しては、ゴールの見直しやエンゲージメント手法の変更(エスカレーション対応等)を行います。
「運用における責任投資の基本方針」、「エンゲージメントの重点テーマ」は、業界環境や当社のエンゲージメント進捗状況を踏まえて、定期的に見直しを行います。「方針・重点テーマ」「個別企業へのエンゲージメント」ともにPDCAサイクルを利かしたプロセスとなっております。
上場会社のESG情報開示の現状をどうみているか、開示してほしい情報
当社は多くのESG課題の中で、気候変動問題、自然資本の問題、社会的責任に係る問題を特に重要な課題と位置付けているほか、SDGsに示された様々な環境・社会課題の解決も重視しています。投資先企業には、これらの課題解決に貢献する事業の取り組みが、経営の長期戦略に適切に織り込まれ、具体的な目標設定や行動計画となることを期待しています。加えて、ガバナンスについては、モニタリングボードへの移行や指名報酬委員会で社外取締役が果たす役割について投資先企業と議論させて頂いており、関連した開示の充実を期待します。また、個人情報管理やサイバーセキュリティ、AI倫理の問題などデジタル化に伴って生じるリスクへの対応など新たに必要となった課題も含めて、より良い情報開示を望んでいます。
議決権行使に際しては、招集通知を含む株主総会関連資料、独立役員届出書、コーポレートガバナンス報告書等を参照しています。多くの会社で株主総会関連書類のWeb開示など内容が充実しています。政策保有株式の縮減状況など、投資家が注目している情報の開示を更に充実させて頂きたいと考えております。
上場会社へのメッセージ
当社がESG投資を進めるうえで、投資先企業の統合報告書やサステナビリティ報告書に記載されている説明やデータは、財務、非財務ともに欠かすことのできない重要な投資情報です。これまでお取組みの結果、各報告書の内容の充実化と高度化には著しいものがあります。企業としての実力もさることながら、特に各報告書作成関係者の並々ならぬご尽力の成果と受け止めており、深く感謝いたします。 投資先企業との直接対話による相互理解の深化こそが、企業価値向上と持続的な成長につながると信じて、日々の運用調査活動を行っています。これまで対話のお時間を頂いた企業の皆様、誠にありがとうございます。また、これまでお会いできていない中小型企業などからのお声掛けに対しても積極的に対応しております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
野村アセットマネジメントからのお知らせ
投資信託および投資顧問サービス(投資助言業および投資運用業)に係るリスク・費用については、当社ホームページをご覧ください。