ESG評価機関等の紹介

FTSE Russell

FTSE Russellとは

1995年に設立されたFTSE Russellは、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)のData and Analytics部門に属し、株式、債券など多くの資産クラスのグローバルなインデックスの他、さまざまなスタイル、ストラテジーのインデックス、ESGや気候変動データを用いた各種ESGインデックスを算出するとともに、ESGスコアなどのデータ、業種分類(ICB)、銘柄コード(SEDOL)、分析ツールなど、機関投資家向けにさまざまな情報、分析サービスを提供しています。

ESGスコアモデルの構造とメソドロジー

FTSE RussellのESGスコアモデルは、調査対象企業の事業特性をもとに潜在的なESGリスクに対する取組みを評価します。ESGリスクとそれに対する取組みを客観的に評価する事で、リスク調整がされたESGスコアが算出されます。なお2023年12月現在で、調査対象企業は全世界で約8,000社、うち日本企業は1,400社がESG評価の対象となっています。

この目的のため、FTSE Russellは14のESGテーマ - 5つの環境テーマ(気候変動、汚染と資源、生物多様性、水の安全保障、サプライチェーン:環境)、5つの社会テーマ(労働基準、人権と地域社会、健康と安全、顧客に対する責任、サプライチェーン:社会)、4つのガバナンステーマ(コーポレートガバナンス、腐敗防止、リスクマネジメント、税の透明性)- を特定しています。ただし、適用されるテーマは、各調査対象企業の事業特性に依存するため、すべての調査対象企業に14のテーマ全てが適用されるとは限りません。

各テーマの下には、調査対象企業のESG取組みと開示内容を評価するため、20-30個の調査項目があります。調査項目の総数は合計300以上ですが、そのいくつかは特定の産業・事業にのみ適用されます。

加えて、特定のテーマ(サプライチェーン:社会など)では、固有のビジネス環境を考慮した、特定の業界を評価する特別な調査項目が存在します。たとえば、銀行は与信に関するESGポリシーの開示を求められます。FTSE RussellのESGスコアは、世界中の投資家や企業によって支持もしくは利用されているGRI、SASB、TCFDといった、国際的なESG情報開示イニシアチブや枠組みを考慮し設計されています。

FTSE Russellの調査員によりテーマ毎の各調査項目について調査対象企業のすべての公開資料が確認され、当該テーマのスコアが算出されます。次に各テーマのエクスポージャーレベルを用いて、環境、社会、ガバナンスの各ピラースコアが算出されます。最後に各ピラーのエクスポージャーレベルを用いてFTSE RussellのESGスコアが算出されます。これらの計算は透明性の高いルールベースの方法に基づきます(ESGスコア、ピラー、テーマ、および調査項目の関係については図表1をご参照ください)。


図表1. FTSE Russell ESGスコアの構造

出所:FTSE Russell

FTSE Russellは、調査プロセスの透明性を確保するために、ESGスコアモデルの方法論を、調査対象企業向けポータルサイト(企業ポータル)及びESGスコアの利用者向けポータルサイト上で提供しています。方法論は、国際的なイニシアチブの最新動向や調査対象企業のサステナビリティに関する実践を反映するため、定期的に更新され、ポータル上でも公表しています。

フィードバックとコミュニケーション

FTSE Russellのデータ収集プロセスは、透明性や客観性を担保する事に留意しつつ、調査対象企業に過大な負担を与えないように設計されています。そのため、公開情報のみに依拠した評価を用い(図表2)、企業ポータル及びQSDポータル上では、どの情報が評価に用いられたかがわかるよう、情報参照元のリンクを提供しています。FTSE Russellの調査員は、調査対象企業が開示する資料と調査対象企業のWebサイトが各調査項目を満たすのに十分な情報かどうかを確認し、初期調査を実施します。その後、調査対象企業に対して電子メールで初期評価を送付し、4週間の確認期間が与えられます。調査対象企業は、初期調査の内容や方法論についてより詳細に知りたい場合、その4週間の間にFTSE Russellの担当者とコミュニケーションする事ができます。調査対象企業は、追加の開示情報またはWebリンクを企業ポータル上で送信でき、その内容が精査された後に最終評価が決定するという流れになります(図表3)。


図表2. ESGスコアに利用する情報源

出所:FTSE Russell


図表3. ESGスコア調査サイクル

出所:FTSE Russell

評価のスケジュール

調査対象企業のESGスコアは年1回評価され、更新後のESGスコアは6月または12月に公表されます。公表タイミングは、企業による各種情報の公表時期に基づきます(一般的には決算月によります)。たとえば、3月末決算の調査対象企業の多くは、翌年の6月に新しいESGスコアが公表されます。この場合、通常第1四半期に評価プロセスが開始されます(図表3)。

FTSE RussellのESGスコアモデル

FTSE RussellのESGスコアモデルは、ESGリスクに対する企業取組を4段階のステップで評価します(図表4)。

  1. 調査対象企業の事業構造、活動国及び収益構造を特定します。
  2. この情報に基づき、14あるESGテーマのうち、どのテーマが適用されるか、また適用されたESGテーマのエクスポージャー(リスク)レベルがどの水準(高、中、低)なのかを判定します。
  3. 適用された各ESGテーマの調査項目を調査対象企業の開示情報により評価し、ESGテーマスコアをそれぞれ求めます。
  4. 各ESGテーマのエクスポージャーレベル、スコアを数式に入力し、環境、社会、ガバナンス各ピラーのスコア及びESGスコアを算出します。


図表4. ESGスコアの評価の流れ

出所:FTSE Russell

なお、(1)において、主要業種以外の複数事業を行う調査対象企業に対しては、複数事業にかかるESGテーマの全てが適用される可能性があります(例えば、製薬事業を展開する食品メーカーには製薬と食品にかかる全ESGテーマが適用されます)。また、複数事業で同一のESGテーマが適用される場合、より高いエクスポージャーレベルが適用されます(図表5)。


図表5. 複数事業を考慮したエクスポージャーレベルの適用
(製薬事業も展開する食品メーカーの例)

出所:FTSE Russell

FAQ(FTSE Russell ESG スコア)

よくある質問(FAQ)icon-block

コンタクト先

ESG-Japan-Co@ftserussell.com (日本語対応可)

上場会社へのメッセージ

今日、サステナブルな社会及び低炭素経済への移行が進行しています。この潮流は、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)及びFTSE Russellのあらゆるお客様、発行体、投資家、その他の仲介者に影響を与えるとの認識から、LSEG及びFTSE Russellではその幅広いニーズに対応し、サステナブル投資・取引の基盤となる信頼できる情報、データ、分析ツールを幅広く提供しています。詳しくは以下のFTSE Russellのウェブサイトもご覧ください。

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FTSE Russellは引き続きグローバルでのサステナブル投資の動向や知見を通じて、日本企業が最新知識の獲得や、それを利用したESG取組水準の向上に貢献できるように努めて参ります。