株式会社とは

私たちの生活と会社

私たちは、たくさんの商品やサービスにかこまれて生活しています。私たちの生活を豊かにしてくれる商品やサービスの多くは、会社が提供しています。よりよいものを人々に提供することによって利益をあげることを、会社は目指しています。会社の事業には不確かなことが多いので、必ずうまくいくわけではありませんが、それでも挑戦する人たちがいることで世の中は成り立っています。

事業にはお金が必要です。たとえば自動車会社であれば、製造工場やそこで働く従業員、新製品開発のための調査研究、広告宣伝や販売などの活動のためにまとまったお金が必要です。お金を外から集めるための非常にすぐれた方法が、株式会社という仕組みです。

株式会社とは

ある事業を始めるのに必要なお金を、金貨1000枚とします。全額をポンと出してくれる気前のよいお金持ちを見つけるのは、たったひとりであってもとても大変なので、金貨を1枚だけだしてくれる人を1000人集める、つまりたくさんの人から少しずつお金を集めるという作戦をとります。

会社は、金貨を1枚だしてくれた人には「株式」をひとつあげます。合計1000の株式を発行すれば、目標の金貨1000枚が達成できて事業を始められます。このようにして金貨を受け取って株式を発行する会社のことを「株式会社」といいます。また、株式の持ち主を「株主」といいます。

株主は会社のオーナー

株主は、会社のオーナーです。会社の事業が成功して利益があがれば、それは株主たちのものです。株主は会社から利益の山分け(「配当」といいます)を受けることができます。会社が損失を出したときにそれを負担するのも株主ですが、株主が負担するのは株式を買ったときにだした金額までです(会社が借金を残して倒産してしまった場合に株主を守ってくれるこの仕組みを、有限責任といいます)。また、株主は株主総会で会社の重要な意思決定に参加することができます。そこでは、株式を多く持っている人ほど発言権があります。株主総会の力はとても強く、たとえば、会社の社長を解任することもできます。

株式をお金にかえるには

いったん発行した株式は、会社にもっていってもお金にかえてもらうことはできません。株主は、株式をお金にかえたければ、他の人にそれを買ってもらう必要があります。そして、そのために証券取引所があります。会社は、株主から出してもらったお金であれば、返済のことを心配せずに事業のために思い切って投じることができます。

株式会社は、ここがすごい!

株式会社の仕組みのすぐれたところを、銀行からお金を借りてくる場合と比較して考えてみましょう。お金は、借りたら必ず返さなければいけません。会社の事業がうまくいけば問題ありませんが、失敗して会社のお金が減ってしまい借金を返せないこともありえます。貸したお金が返ってこないと銀行は困りますので、失敗する可能性が高い事業にはお金を貸したがりません。しかし、失敗する可能性が高くてもうまくいった場合には大きな成功になるような事業については、世界の発展のために応援する必要があります。

株式会社の仕組みは、成功と失敗の振れ幅の大きな事業(リスクの大きな事業)であってもお金を集められるように設計されています。会社のお金が減った場合の損を株主が負担してくれる代わりに、利益が出た場合にはそれも株主のものになります。また、株主ひとりひとりが負担する金額が少なくて済むこと、いろいろな会社の株式に少しずつ分散してお金を投じられること、有限責任のおかげで最悪の場合にこうむる損の大きさがはっきりしていることも、株主がリスクの大きな事業を応援できる理由です。

株式会社の歴史

現在ある株式会社の起源は、1602年にオランダで設立されたオランダ東インド会社だといわれています。この会社は、東南アジアの香辛料貿易という、成功した場合にえられる見返りがとても大きく、きわめて危険な事業を行っていました。まさに、株式会社の仕組みがうってつけの事業だったといえます。この世界最古の株式会社は日本との関わりも深く、鎖国体制をとっていた徳川幕府との間で長崎の出島で交易を結んでいたこともあります。400年以上も前につくられた仕組みが今も変わらず使われていることからも、この発明がいかに優れていたかがわかります。