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東京株式取引所沿革圖解巻軸

下の写真は、明治11年から営業を開始した東京株式取引所(東株)の内外の事情や風俗慣行について、昭和9年夏、清水柳太画伯が当時のことを知る古老から聞いた話を絵入りでまとめたものです。

『そのころの兜街』というタイトルで始まるこの絵巻物は、『渋沢栄一伝記資料・第五巻』にも収録されており、開業当時の東株の模様を伝える大変貴重な資料となっています。

一説によれば、高貴な方が株式取引所を見たいと言ったところ、それでは畏れ多いと、当時の理事長がこの絵巻物を持参し、株式取引所の機能を説明したと言われています。この絵巻物では当時の立会風景を次のように描いています。

「そのころは立會開始に拍子木を小使君が叩いて町内の各店に知らせ廻る。最後に三度、チョン、チョン、チョンと止木を打てば立會は開く…東株創業時の立會場疊敷。場台は疊より五尺位高く…場台の直後に市場見付。一二尺四寸の座台に儼然としてあぐらをかき立會を監視(課長級)…往来の雜沓や、水天宮の御縁日などで聲の徹らぬ場合に街頭連絡の暗合。額に手を當てたらば當限り。腹を叩いて見せたらば中物と判じ給へ。足ぶみの型を示したらば先物です…立會は火縄(棕梠縄製)約二寸位の長さのものに火をつけて立會を開始。火縄の消えた時が相場の終結。俗にこれを火縄相場と稱へた」

また、この立会風景のほか、絵巻物では、兜町は万事が派手で豪勢であり、中でも異彩を放っていた大江卓東株第7代理事長(明治25年~30年)についても描かれています。大江理事長は五つ紋の羽織袴に山高帽をかぶり、馬車に乗って出勤し、その馬車は理事長代理が自ら御者となり、一緒に取引所に乗り込むという豪快振りを放っていたとのことです。

東京株式取引所沿革圖解巻軸1
東京株式取引所沿革圖解巻軸2
東京株式取引所沿革圖解巻軸3
東京株式取引所沿革圖解巻軸4