エクイティ・ファイナンスの品質向上

本プリンシプル策定に至る経緯

上場会社が、エクイティ・ファイナンスにより資金調達を行うことは、資本市場の本来的機能を活用するものであり、尊重されるべきものですが、法令や取引所規則等のルールに違反しない限り何をしても構わないという安易な考え方は適切ではありません。
資本市場を取り巻く環境が日々変化する中、取引所が的確な対応を行っていくためには、必要に応じてルールの見直しを行っていくことが重要ではありますが、いかにルールを見直しても、対応し難い事案が現れます。日本取引所自主規制法人(以下「当法人」という)が自主規制業務を行う中で、上場会社の中には形式的なルールの遵守さえすれば良いとの認識がありうること、調達資金が事業資金として有効に活用されることなく法令や取引所規則等に違反するとは言えない複数の行為を介して最終的に特定の個人・法人に流出している事案も散見されます。
当法人は、このような事案に柔軟に対処するために、ルール・ベースのアプローチに加えて、プリンシプル・ベースのアプローチを組み合わせることが有効であると考えています。

プリンシプル・ベースのアプローチ

ここで言うプリンシプル・ベースのアプローチとは、上場会社や市場関係者が、尊重すべき原理・原則(プリンシプル)を確認し、共有することで、各々がその持ち場に即した規範意識を働かせ、自主的に行動していくことにより、資本市場全体の質的向上の実現を目指すことです。
この点、本プリンシプルは、法令・取引所規則等のルールで定められている最低限の規律にとどまらず、資本市場を利用して資金調達を行う場合に依拠すべき基本的な考え方を示すものであり、ルールのように上場会社や市場関係者の行動を一律に拘束するものではありません。

  • 仮に、本プリンシプルの充足度が低い場合であっても、取引所規則上の根拠なしに、上場会社に対する措置等が行われることはありません。

期待される効果

当法人は、本プリンシプルが上場会社や市場関係者によって共有されることによって、以下の効果がもたらされることを期待しています。

  1. 上場会社においては、明示的なルールがない場合やルールの解釈が分かれる場合であっても、プリンシプルによって、エクイティ・ファイナンスの実施にあたり指針とすべき基本的な考え方に照らした上で経営判断を行うことが可能となる。
  2. 引受人や証券会社、弁護士、公認会計士、コンサルタント等上場会社に対してアドバイスを提供する市場関係者においては、プリンシプルに示された基本的な考え方を十分に理解したうえ、上場会社がかかる基本的な考え方から逸脱することのないよう助言を行い、その適切な経営判断に貢献していくことができる。
  3. 株主や投資者においては、プリンシプルが、上場会社の実施するエクイティ・ファイナンスの適切性を判断する際の拠り所となるため、より合理的な投資判断を行うための基礎とすることができる。
  4. 金融商品取引所においては、自主規制業務の過程で、プリンシプルに示された基本的な考え方に沿って上場会社や市場関係者との対話を行うことが可能となる。また、直接に適用可能なルールが見当たらない場合や包括的ルールを解釈・適用する場合には、プリンシプルに示された基本的な考え方が判断の指針となり、より実態に即した的確な対応が可能となる。

本プリンシプルの内容

4つの原則から構成されます。その内容は、エクイティ・ファイナンスに係る法令・規則等の趣旨や精神を整理、具体化し、これに当法人が自主規制業務を行う中で蓄積されてきた観点を付加したものです。いずれも、資本市場に関わる者において従前より共有されているべき基本的な原則です。

principle

エクイティ・ファイナンスの品質向上に向けた継続的な取組

当法人では、エクイティ・ファイナンスの品質向上に向けて、本プリンシプルを浸透させるための継続的な活動に取り組んでいます。セミナー、寄稿等による解説などの活動を行っています。

2014年12月、プリンシプルについての理解を皆様に深めていただくため、事例をご紹介しながらプリンシプルの趣旨と内容を解説する事例集を作成いたしました。

公表資料