閉じる
- 2020/11/20 更新
- このページを音声で聴く
- 印刷
ESG情報開示枠組みの紹介
経済産業省「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス - ESG・非財務情報と無形資産投資 -」
経済産業省は2017年に 「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス-ESG・非財務情報と無形資産投資-（価値協創ガイダンス）」を公表しました。このガイダンスは、経済産業省に設置された「持続的成長に向けた長期投資（ESG・無形資産投資）研究会」における検討に基づいて策定されたもので、企業と投資家との間の対話や情報開示の質を高めるための基本的な枠組みを提示し、自主的・自発的な取組の「指針」となることを期待して作成、提案されたものです。2018年には、ガイダンスで示した項目の補足的な説明や、項目間の関連性の解説を行った「価値協創ガイダンス解説資料」も公表しています。
ガイダンスの特徴
価値協創ガイダンスは、企業と投資家が情報開示や対話を通じて互いの理解を深め、持続的な価値協創に向けた行動を促すことを目的としています。その観点から、このガイダンスには大きく分けて2つの役割が期待されています。
- 企業経営者の手引きとして 企業経営者が、自らの経営理念やビジネスモデル、戦略、ガバナンス等を統合的に投資家に伝えるための手引きとしての役割が期待されています。このガイダンスの目的は、直接的には企業の情報開示や投資家との対話の質を高めることではありますが、それを通じて、経営者が企業価値創造に向けた自社の経営のあり方を整理し、振り返り、更なる行動に結びつけていくことも期待されています。
- 投資家の手引きとして 投資家が、中長期的な観点から企業を評価し、投資判断やスチュワードシップ活動に役立てるための手引きとしての役割も期待されています。投資家やアナリストは、企業側か情報が開示・説明されることを待つのでなく、企業との情報・認識ギャップを埋めていくためにこのガイダンスを参照して企業と対話を行い、自らの投資判断等に必要な情報を把握することが期待されています。また、このガイダンスは、機関投資家がスチュワードシップ責任を果たすために行う投資先企業の状況把握や、対話・エンゲージメント等を実施するための枠組みとして活用されることも想定しています。機関投資家が自らスチュワードシップ活動を行う場合はもちろん、アセットオーナーと運用機関との対話に活用することも期待されています。
価値協創ガイダンスは、無形資産投資やESGへの取組がどのようにして企業の稼ぐ力（強み・競争優位性）を確保・向上させ、中長期的な企業価値の創造につながるかというストーリー、すなわち「価値創造ストーリー」を説明するためのフレームワークとして、「価値観」、「ビジネスモデル」、「持続可能性・成長性」、「戦略」、「成果と重要な成果指標（KPI）」、「ガバナンス」という一連の価値創造の流れを整理しています。これは、競争優位やイノベーションの源泉となる、人材や知的財産、ブランド等の無形資産への投資を重視し、また、企業の持続可能性・成長性という観点から、ESGへの取組も重視する考え方に基づくものであります。
ESGに関しては、主に「持続可能性・成長性」、「戦略」の項目で触れられており、そこでは、企業が、自社の中長期的な企業価値やビジネスモデルの持続性に影響を与える、あるいは事業の存続そのものに対するリスクとして、どのようなESG要素を特定しているか、その影響をどのように認識しているかを示すとともに、そのようなリスクへの対応や事業機会につなげるための取組を戦略として示すことの重要性が指摘されています。
表紙イメージと主な項目
出典：経済産業省（2017） 「価値協創のための統合的開示・ 対話ガイダンス - ESG・非財務情報と無形資産投資 -（価値協創ガイダンス）」
ロゴマークについて
「価値協創ガイダンス」を参照して開示資料を作成し、公表する国内上場企業は、「価値協創ガイダンス」ロゴマークを当該開示資料（統合報告書、アニュアルレポート等）に表示することができます。ロゴマークの使用により、投資家をはじめとした情報利用者は、ガイダンスを用いた対話や企業評価・投資判断等を行いやすくなります。
関連フレームワークについて
「価値協創ガイダンス」を踏まえ、重要分野や特定の項目に焦点を当てたガイダンス等も策定されています。価値協創ガイダンスの理念を共有した、企業と投資家の多様な「共通言語」を活用することで、企業は目的に合わせた情報開示を行い、より効率的に投資を呼び込むことができます。
