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和服用入場鑑札と仲買店従業員の半纏

和服用入場者鑑札(木製)(写真左)、和服用入場者鑑札(木製)(写真右)

上の写真は、立会場に入るために必要とされていた東京株式取引所(東株)の和服用入場鑑札(木製)で、大正時代に使用されたものです。東株の開業当時から、このような鑑札が使われていたのかどうか定かではありませんが、当時から立会場は特別な場所であったということが伝わってきます。

半纏

上の写真は、大正時代に仲買店従業員が着用していた“半纏”ですが、鑑札に和服用があることから、このころまでは立会従業員をはじめ仲買人たちの格好は和服であったようです。

昭和初期にある古老が綴った『株界源平盛衰記』では、明治30年ごろの様子を、「その頃、株店の主人公には勿論縞の着物、博多の一本獨姑の角帯なんかで雪駄履き、チョイと粋な格好であったが、小僧などは雨が降ると裸足で印伴天を着て駈け歩いていた。店員は和服に前垂掛けで草履ばき、と云つても質屋の番頭のようなギコチないものではなく、キツッとして何處か粋な處のある若い衆の姿は、花柳界などでひどくモテたものだ。」などと描いています。

明治のころは、電話が珍しかったこともあり、和服を着た小僧さんたちが、売買注文や約定値段を走って伝えたり、町の角々に立って額に手を当てる(当限)、 相撲のシコのような足踏みをする(先物)などのしぐさで連絡していたようですが、大正10年ごろに「立会場に出入りする者は洋服に限る」とされたことから、兜町界わいの風景も次第に和服姿から洋服姿に変わっていったそうです。