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2017/01/25 東証 カブドットコム証券株式会社に対する処分について

 

日本取引所自主規制法人(以下「JPX-R」という。)及び日本証券業協会が行ったカブドットコム証券(以下「同社」という。)に対する合同検査において、作為的相場を形成させるべき取引の受託等を防止するための売買管理が十分でないと認められる状況(金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第12号違反)が認められました。
このため、東京証券取引所は、同社に対して、取引参加者規程第34条第1項の規定に基づき処分(過怠金1,000万円の賦課)を行うとともに、同規程第19条第1項の規定に基づき、業務改善報告書の提出を請求しました。

違反行為の概要

○ 作為的相場を形成させるべき取引の受託等を防止するための売買管理が十分でないと認められる状況

(1) 同社における不公正取引の抽出の状況

同社コンプライアンス・リスク管理部審査課(当時。以下「審査課」という。)は、①当取引所取引参加者における不公正取引防止のための売買管理体制に関する規則(以下「売買管理規則」という。)で定める抽出基準に準じて取引を抽出して確認し、その後、②さらに同社が定める審査基準に該当した取引を対象に売買審査を行うとしている。

同社は、従前は上記①及び②のとおり取引の抽出及び売買審査を行っていたが、2012年4月13日に不公正取引監視システム(以下「MTS」という。)を導入した際、コンプライアンス・リスク管理部次長兼審査課長(当時。以下「コンプライアンス・リスク管理部次長」という。)了承の下、①の抽出結果を出力せず、②の審査基準に該当した取引のみを出力する仕様とした。その結果、同社の売買審査の対象となる顧客の抽出は、審査対象となる取引を大幅に絞り込むものとなっており、適切に行われていなかった。

(2) 同社における売買審査の状況

同社審査課では、コンプライアンス・リスク管理部次長以下6名体制で、MTSにより抽出したデータを使用し、各審査項目に担当者を割り振り日々の売買審査を行っている。

同社では、審査の結果、審査担当者が注意喚起等の措置が必要であると判断した事案については、コンプライアンス・リスク管理部次長が措置の妥当性を判断し、必要な対応を行うとしている。しかし、各審査担当者が注意喚起等の措置が必要との判断に至らなかった事案については再チェックが行われることはない。
審査課を管理する内部管理統括責任者(当時)である取締役代表執行役副社長及びコンプライアンス・リスク管理部長は、売買審査の状況を把握するため、電子メールによる週次の報告を受けているが、注意喚起、取引規制口座、JPX-R売買審査部からの特定の委託者の発注・約定形態に関し違反行為につながるおそれがあることについての売買の実態説明等の件数のみであり、個別の事案に係る具体的な売買審査の内容等についての報告までは行われていなかったため、売買審査の状況が十分に把握できない状況にあった。

こうしたなか、同社で行われていた売買審査では、顧客の取引動機の確認、株価への影響分析の確認、反復継続性の観点からの審査等を行うことなく問題なしとして処理しているなど、不適切な審査を行っている状況が認められた。

また、同社がインターネットにより顧客から受託した株式等の売買取引について、2015年8月から2016年3月までの間においてJPX-R売買審査部により実施された実態説明事案のうち、同社のみで取引が行われた17事案について同社の対応を確認したところ、同社は実態説明を受けた場合であっても、適切な審査が行えておらず、顧客に対する措置については、安易に措置不要と判断している事例や、軽い措置の実施に留まり、不公正取引の未然防止のための実効的な措置を講じず、結果として問題のある取引の発注を継続させている状況が認められた。

(3) 同社の内部管理態勢

同社の経営陣及びコンプライアンス・リスク管理部長は、売買管理業務に対する知識及び経験が不足していたことから、他社で売買審査の経験を有するコンプライアンス・リスク管理部次長を採用し態勢の構築を図ったが、その後は業務を任せきりにして執行状況を把握していないなど、実質的な管理を怠り、売買管理業務に不備がある状況を認識できなかった。また、コンプライアンス・リスク管理部次長も、担当者による審査結果を十分に確認しておらず、日々の売買審査業務を適切に管理できていなかった。
更に、業務部門の不備や問題点を発見することが期待される内部監査では、売買審査態勢について抽出基準に問題がないことは確認していたが、抽出基準に該当した取引が出力されないことには気づかず、経営陣が本件不備の端緒を認識する機会を逸することにつながっていた。

同社における(1)及び(2)で認められた不備は、当取引所売買管理規則第4条第1号、第3号及び第4号に違反し 、同社の売買管理の状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第12号に規定する「実勢を反映しない作為的なものを形成させるべき上場金融商品等に係る買付け若しくは売付けの受託等をする行為を防止するための売買管理が十分でないと認められる状況」に該当するものと認められる。

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