北浜博士のデリバティブ教室

デリバティブの取引高が増えている理由

なぜデリバティブの取引高が世界で増えているの?

この数十年の間に金融市場は大きく拡大し、その取引の量は大幅に増加しました。

世界の取引所デリバティブ取引高の推移

世界のデリバティブ市場取引高の推移

ここではデリバティブ取引が拡大した要因をいくつか見ていきましょう。

商品の多様化

「2-1_デリバティブの様々な市場-デリバティブの主な原資産」で示したように、証券、商品、通貨といった様々な原資産に対してデリバティブ商品が開発されています。最近では信用リスクや排出権を原資産とする商品も登場しています。
新しいデリバティブ商品が開発される理由として、社会のリスクヘッジに対するニーズの高まりや新たな収益機会の追及があります。

2-1_デリバティブの様々な市場-デリバティブの主な原資産

金融取引の国際化

資本移動や金融取引に関する法律等の世界的な自由化に伴い、世界の金融商品に対するアクセスは格段に良くなりました。

例えば、大阪取引所に上場されている日経225先物は、シンガポール取引所とシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)にも上場されており、世界の投資家に対して広く取引機会が提供されています。一方、米国、インドといった海外の取引所の上場デリバティブ商品が大阪取引所でも上場されており、日本の投資家にグローバルな取引機会が提供されています。

IT技術の進展

どんなに多くのデリバティブ商品が開発されても、安全且つ効率的に取引できなくては、投資家にとって魅力的とはいえません。

近年のIT技術の進展は、取引所だけでなく、取引所に注文を出す証券会社や投資家といったあらゆるプレーヤーに、処理速度の劇的な向上をもたらしました。今日では、注文に際して人手をほとんど介さないアルゴリズム取引と呼ばれる取引手法も増えており、デリバティブ取引の増加に一役買っています。

 

日本におけるデリバティブに対する誤解(誤解が招いた先物悪玉論)

これまで順調に取引量が増えてきた訳ではなく、デリバティブに対する誤解が生じて、取引量が減ったこともありました。

日本を代表する先物取引に、世界中の投資家が参加している「日経225先物」があります。
「日経225先物」のスタートは1988年、日本はバブル経済の真っ只中でした。内外投資家からの強いニーズを背景に日経225先物は急拡大を続け、1990年にはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の「S&P500先物」を抜いて、取引代金ベースで世界一の商品まで上り詰めました。

ところが、バブル崩壊後の株価下落が続くなかで、取引高を伸ばし続ける日経225先物への批判が次第に目立つようになります。「株価下落を主導しているのは先物取引で、先物があるから現物が下げているのではないか」という、いわゆる先物悪玉論です。「犬の尾っぽ(派生商品)が胴体(現物相場)を振り回している」とも揶揄されました。

取引する際に必要な証拠金の引き上げなど度重なる規制が実施され、日経225先物はその取引高を大きく低下させることになりました。

結果的に資金は国内から海外へと移動し、海外の日経225先物の取引を増加させるという皮肉な現象を招きました。

しかし、その後、先物取引の役割の重要性が改めて認識されるのに伴い、国内の日経225先物も再び拡大を見せ始めました。