売買のルール(応用編)

1.注文の方法

投資者が注文をする場合には、大きく分けて成行(なりゆき)注文と指値(さしね)注文の2つがあります。

成行注文 いくらでもよいから、買いたい/売りたいとする注文
指値注文より優先されますが、思わぬ値段で約定する可能性があります。
指値注文 ○円以下なら買いたい/○円以上なら売りたいとする注文
たとえば100円の買指値注文の場合は、「100円以下なら買いたいが、100円より高い値段では買いたくない」という意思表示になります。この場合、100円はあくまで限度価格なので、99円で買えることもありえます。現在の値段が101円なら101円で買うことはせず、値段が100円以下になるまで待つことになります。

2.売買の方法

2つの売買方式

東京証券取引所の売買には"板寄せ方式"と呼ばれる方法と"ザラバ方式"と呼ばれる方法とがあります。板寄せ方式は、寄付や取引終了("引け"又は"大引け(おおびけ)"といいます。) などの場合に行われる売買契約締結の方法で、ザラバ方式は、寄付と引けの間("ザラバ"といいます。) に行われる売買契約締結の方法です。

  板寄せ方式 ザラバ方式
実施時 立会開始時
立会終了時
売買中断後の再開時
特別気配・連続約定気配の表示時
左記以外
(寄付と引けの間=ザラバ等)
約定価格 売注文と買注文から、合致する値段を求め、その値段が単一の約定値段となる 価格優先の原則、時間優先の原則に従い、合致したものから順に約定する

それぞれの方法をこれから説明します。

板寄せ方式

始値を決定する場合の売買システムの「板」の状態をみますと、第1図のように、売呼値と買呼値が交錯し、買呼値より低い値段の売呼値や、売呼値より高い値段の買呼値があり、また、成行(なりゆき)の売呼値や成行の買呼値がある事例が多くみられます。
板寄せ方式は、このような状態のなかで、売呼値と買呼値を優先順位の高いものから順次対当させながら、数量的に合致する値段を求め、その値段を単一の約定値段(始値)として、売買契約を締結させる方法です。
なお、始値が決定されるまでの呼値については、すべて同時に行われたものとみなされ、時間優先の原則は適用されません。また、後場始値決定前や売買中断後の最初の約定値段決定前等には、前場中やザラ場中に発注された注文も含めて、それまでに発注された注文は、すべて同時注文として取扱います。
では、第1図によって、始値決定までの過程を説明しましょう。

始値決定時の売買システムの注文控(板)

第1図 始値決定時の売買システムの注文控(板)

  • アルファベットは取引参加者記号の代用。
  • アルファベットの上の数字は株数で、単位は1単元の株式数100株とする。
  • 〇印は呼値の取引参加者記号及び株数を省略。
  • 始値が決定するまでの呼値については、すべて同時に行われたものとみなす。

まず、成行の売呼値 600株(H200株、I400株)と、成行の買呼値 400株(K100株、M300株)を対当させます。この時点では、成行の売呼値が200株残ります。

次に、始値を500円と仮定して、成行の売呼値の残りの200株及び499円以下の売呼値 600株(S200株、R400株)と、501円以上の買呼値800 株(P500株、N200株、T100株)を対当させます。
以上の結果、売呼値が1,200株、買呼値が1,200株で、株数が合致します。

最後に、500円の売呼値 300株(E 100株、F 100株、G 100株)と、500円の買呼値1,000株(A400株、B300株、C200株、D100株)を対当させます。しかし、売呼値が300株、買呼値が 1,000株ですから、株数が合致しません。

このような場合には、売呼値又は買呼値のいずれか一方の全部の数量が執行されれば、売買は成立します。したがって、500円 の売呼値の全部 300株と、500円の買呼値を行っているA、B、C取引参加者の呼値について各100株、合計300株とを対当させます。この際、500円の買呼値の数量を取引参加者ごとに合計して多い順から順番を付け対当させます。この場合、A,B,C、Dの順となりますので、Dには始値での約定はありません。

板寄せが行われた場合、上記の順番に従って、各取引参加者に1単位ずつ順次割当を行っていきます。この結果、始値が500円に決定され、その値段で合計1,500株の売買契約が締結されることになります。

なお、板寄せ方式による売買は、各取引参加者単位に成立します。その後、各取引参加者は、それぞれの社内ルールにしたがって、注文を出されたお客様への配分を決めることとなります。各社のルールについては、ご利用の証券会社にお問い合わせください。

ザラバ方式

ザラバ方式は、始値が決定された後に、売買立会時間中継続して個別に行われる売買契約の締結方法です。ザラバとは、始値と終値との間に行われる継続売買のことをいいます。
では、第2図によって、ザラバ方式の実際について説明しましょう。

ザラバの売買システムの注文控(板)

第2図 ザラバの売買システムの注文控(板)

例えば、売買システムの「板」の状態が第2図のような場合に、Mが500円で200株買いたいという呼値をしますと、Aの500円の売呼値300株のうち200株と対当させて売買契約が締結されます。

次いで、Nが1,000株の成行の買呼値をしますと、まず、Aの500円の売呼値の残り100株及びBの500円の売呼値300株と対当させて売買契約が締結され、次に、Cの501円の売呼値 400株及びDの501円の売呼値 200株を対当させて売買契約が締結されます。

その後、Kが499円で500株の売呼値をしますと、499円の買呼値をしているFの 300株及びGの200株を対当させて売買契約が締結されます。

この結果、次のような売買契約が締結されたことになります。

売買契約

このように、売買立会時間中、間断なく呼値が行われ、値段が合致しますと、つぎつぎに売買契約が締結されてゆくことになるわけです。