北浜博士のデリバティブ教室

Q6 オプション取引の「コール」と「プット」の銘柄を、売り買いするってどういうこと?

中之島さん オプションが「ある物を、ある日に、ある値段で買うまたは売る権利」ということはだいたい理解したんだけど、その権利を売り買いするって言われると、複雑で混乱してきそう。
北浜博士 では、その部分を解説していこう。ここはオプションの仕組みの大事な部分なので、少し長くなるけどがんばるんじゃよ。
中之島さん ええ、がんばるわ。
北浜博士 まず始めに、オプション取引では、「買う権利(コール)」を買う立場の人・売る立場の人と、「売る権利(プット)」を買う立場の人・売る立場の人という4つの立場が存在するんじゃ。
中之島さん 株取引も先物取引も、買う人と売る人の2つの立場しかないと思うんだけど、オプション取引は4つもあるのね。
北浜博士 そうじゃ。それから、Q5でオプションの買い手は自動車保険の加入者と似た立場、 売り手は保険会社と似た立場であるという説明をしたのを思い出してほしいんじゃ。
売買するものは、「買う権利(コール)」と「売る権利(プット)」の2種類あるが、どちらも買い手は保険加入者と似た立場、売り手は保険会社と似た立場なので、買い手と売り手別に説明をしよう。
中之島さん 売り買いするものの違いはあれど、買い手と売り手で立場が変わるということなのね。
北浜博士 それからもう1つ。同じ銘柄を買った人と売った人とでは、損益面で逆の立場になるんじゃ。
中之島さん えっと、売った人が得をしたとしたら、買った人は同じ金額分損をするということかしら?
北浜博士 そういうことじゃ。それを頭に入れて、まずは買い手の方から説明していこう。
下図のように、「買う権利(コール)」の場合、原資産価格が上がれば上がるほど利益は拡大し、「売る権利(プット)」の場合、原資産価格が下がれば下がるほど利益は拡大するんじゃ。つまり、買い手の場合、コールは損益分岐点を上回った分、プットは損益分岐点を下回った分が利益となり、その利益に上限はないんじゃ。
中之島さん 利益が出る状態になれば、その時の原資産の価格に応じて、利益額がどの程度になるかはわからないのね。じゃぁ、思惑通りに行かなくて損をする状態になったらどうなるのかしら?同じように無限に損をすることになるんじゃ…?
北浜博士 普通に考えれば、そうじゃよな。じゃが、ここでオプションの特徴が生きてくるんじゃ。オプションの買い手は、権利を使わないという選択ができることを思い出すんじゃ。つまり、損をする状態になれば、権利を放棄すればいいんじゃ。ただし、権利を購入する時に支払った金額(オプション料=プレミアム)は戻ってこないので、その分だけは損になるんじゃよ。
中之島さん 買い手は保険加入者と似た立場だから、事故等が起きなかった場合は、支払った保険料は掛け捨てになるということだったわね。
北浜博士 そうじゃ。じゃから、買い手は損をしたとしても、はじめに支払ったプレミアム分に限定されるんじゃ。

 

中之島さん 買い手はいくら得をするかわからないけど、損する金額が限定されているという点では安心ね。
北浜博士 じゃぁ次に売り手の説明をしよう。
下図のように、「買う権利(コール)」の場合、原資産価格が上がれば上がるほど損失は拡大し、「売る権利(プット)」の場合、原資産価格が下がれば下がるほど損失は拡大するんじゃ。つまり、売り手の場合、コールは損益分岐点を上回った分、プットは損益分岐点を下回った分が損失となり、その損失に上限はないんじゃ。
中之島さん 買い手と逆ね。売り手が損をする場合は、その時の原資産価格に応じて、損失がどれだけになるかわからないのね。じゃぁ得をする場合は…?なんとなく無限に得をする訳ではなさそうね。
北浜博士 その通り。買い手が損をする状態になったら権利放棄をして、損失を最初に支払った金額(オプション料=プレミアム)に限定できるということを思い出すんじゃ。買い手が損をする状態ということは、通常であれば売り手が得をする状態ということじゃ。でも、買い手は当然権利を放棄する。じゃから、売り手は、最初に受け取ったプレミアムの額分だけが利益となり、それ以上の利益は見込めんのじゃ。

 

中之島さん なるほど。売り手は保険会社と似た立場だから、事故等が起きなかった場合は、最初に受け取った金額分だけが利益となるんだったわね。
北浜博士 買い手と売り手の立場の違いがわかったかの? 4種類の立場の違い別に、損益分岐点と利益・損失の関係をまとめた表を作ったので、復習に使ってみてはどうかな。