機関投資家のESG投資
インベスコ・リミテッド
インベスコ・リミテッドと日本法人インベスコ・アセット・マネジメント株式会社について
インベスコはグローバルな運用力を提供している世界有数の独立系資産運用会社です。
私たちは世界中のお客さまの資産運用ニーズに応えるため、グローバル市場で培った独自の運用力を結集して幅広い投資戦略を多様な手段で提供しています。
米国アトランタにグループ本社を構え、ニューヨーク証券取引所に上場しており、IVZというティッカーでS&P500の指数構成銘柄です。
前身企業が1935年に設立されて以来拡大・成長を続け、現在では世界20か国以上に拠点を置き、2026年3月末時点の運用資産残高は日本円で340兆円を誇ります。(2兆1,595億米ドル。1為替レートは159.09円/米ドルで換算、WMロイターのレートに基づく。)
インベスコの日本法人である、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)は、グローバルな運用力を提供する世界有数の独立系資産運用会社インベスコの日本拠点です。
当社は、内外の公的年金・企業年金、事業法人、銀行や保険会社など機関投資家を対象に、株式や債券などの伝統的な投資戦略からオルタナティブなど非伝統的な投資戦略まで幅広い商品およびサービスを提供しています。また、銀行・証券会社・保険会社などを通じて個人投資家向けの投資信託およびサービスを提供しています。
ESGインテグレーションとスチュワードシップ方針・体制
当社は、実効性の高いスチュワードシップ活動を実践するにあたり、当社で投資判断する日本株式戦略におけるポートフォリオ・マネジャーとリサーチ・アナリストが主体となり、企業とESG評価を含む建設的な対話を行うとともに、株主議決権行使の意思決定を行う体制を築いています。
また同時に、このスチュワードシップ活動をより強固なものにするためのガバナンスを以下の図のように整備しています。
議決権行使の方針
議決権の行使は、スチュワードシップ活動の重要な要素の一つです。
原則として、当社内で独自に策定している「株主議決権行使のガイドライン」に基づいて議決権を行使しますが、例えば、投資一任契約のお客様が個別のガイドラインを策定している場合等には、お客様のガイドラインが当社のガイドラインに優先することもあります。
当社においては株主議決権行使のガイドライン全文を自社のウェブサイト上にて開示しています。
投資先企業にも当社の議決権行使の考え方を広く周知し、必要に応じて対話の機会をもっています。
当社は、すべての投資先企業に対して議決権を行使するよう努めています。
投資先企業に対する議決権行使は、ESGの観点も踏まえて投資先企業の持続的成長に資するかを基準に、投資先企業の状況や当該企業との対話等を反映させ、議案に対する賛否を判断します。
議決権行使のガイドラインは適宜見直し、投資先企業の持続的な企業価値拡大に資するような内容となるよう努めています。
議案によっては投資先企業との間に建設的な対話の機会を持った上で、特別な判断を行う場合があります。その場合は、責任投資委員会において承認を得て対応します。
どのようなESG情報をどのように投資判断に活用しているか
当社では企業のESG戦略とそのパフォーマンスは、長期的な企業価値拡大の持続可能性に大きな影響を及ぼすと考えています。
別の言い方をすれば、長期投資家としてESG情報の分析は投資判断の確信度をあげるための重要な要素であると考えています。
従って、投資判断の最終的な意思決定を行う際には、主に財務情報に基づくファンダメンタルズ・リサーチに加えて、ESG戦略の評価を含む定性的な情報の分析を重視しています。
ESG情報の分析は、企業からの各種開示情報や外部のデータベンダーによるリサーチ等の活用に加え、企業との建設的な対話を通じて得られた情報等をもとに行います。
その過程で、各企業のESGに関する重要課題(マテリアリティ)をとらえるように努めています。
ESG情報は、それ自体のみをもって投資判断を行うことはしませんが、企業価値拡大の持続可能性を判断する重要な要素の一つであると捉えています。
当社では、企業とのミーティング、特にマネジメントとのミーティングは投資判断を行うにあたって大きな比重を占めております。
長期投資家として、持続的な企業価値向上を重視し、中長期的視点に立って企業とのミーティングに臨んでいます。
投資判断に必要な情報を得るとともに、必要に応じて様々な対話を行い、またこうして得られた情報等はチーム内で共有しています。
企業とのエンゲージメントの方法、トピック、頻度など
投資判断の最終的な意思決定を行うポートフォリオ・マネジャーが、投資先企業との間に建設的な対話の機会を持つことは非常に重要であると考えます。長期投資家として、持続的な企業価値向上を重視し、中長期的視点に立って企業とのミーティングに臨み、投資判断に必要な情報を得るとともに、必要に応じて様々な対話を行います。従って、特に事前にアジェンダを設定していない場合でも、投資先企業との通常のミーティングにおいてESG戦略を含む様々な建設的な対話を行う機会は多くあります。日本株式運用チームでは、四半期ごとのスチュワードシップ・ミーティングにおいて、ポートフォリオ・マネジャーおよびリサーチ・アナリストが主体となりエンゲージメント活動についてのレビューを行い、ESG情報の評価、重点エンゲージメント銘柄及び重要なESG課題の選定、エンゲージメント内容・成果の共有および今後の取組を協議します。投資先企業に対しては、チームが共同で当該企業の事業にとって重要なESGリスクおよび機会(ESGマテリアリティ)を特定し、企業価値の持続的な成長を目指して、企業との直接的なエンゲージメントに役立てています。
上場会社のESG情報開示の現状をどうみているか、開示してほしい情報
現在の日本企業のESG情報開示は、この数年で大きく進展しています。すでに有価証券報告書では記述情報としてサステナビリティ関連情報の開示がされており、今後はSSBJ基準の導入もスケジュールされています。一方でESGに関連する情報と本質的な企業価値における関連が不透明であるという意見が投資家・企業双方において聞こえると認識しています。
機関投資家が投資先企業の企業価値を予測するうえでは創出されるキャッシュフロー、当該企業における資本コスト、資本収益率、キャピタルアロケーション方針が期待に沿っているか否か、合理的な意思決定がなされているか否かが重要です。この判断をする過程で財務情報だけではなく、E環境やS社会におけるリスク要因および機会の有無、またGガバナンスがその企業価値の決定要因を適切にモニタリングする体制・スキルを備えているかどうかが重要になるため、投資家にとってESG関連情報が必要となります。
その観点においては現状の開示は、制度や数値を羅列する形式にとどまりがちであり、投資家が最も知りたい「経営として何を重視し、どのような意思決定をしているのか」というメッセージが伝わりにくいと感じられるものもあります。さらに、個別企業の強みや特徴が見えにくく、画一的な開示になっている点も課題です。
投資家としては、比較可能性が重要であるものの、一律のフォーマットよりも、企業ごとの競争優位や戦略が理解できる開示が重要だと考えています。
開示内容としてさらに求めたいものとしては、
- 経営戦略とESG(特に人的資本戦略)との具体的な結びつき
- 指標の単年度ではなく、経年での変化とその背景説明
- 数値の裏にある経営判断や施策の意図
例えば、賃金や多様性指標についても、単に数値を示すだけでなく、「なぜその結果になったのか」「どのような意思決定があったのか」といった説明があることで、投資家の理解は大きく深まります。
投資家は、数値そのもの以上に、それらを通じて企業の将来戦略や持続的成長の可能性を読み取ろうとしています。その意味で、今後求められるのは、「データの開示」から「ストーリーとしての開示」への進化だと考えています。
上場会社へのメッセージ
ESG情報開示は、単なる規制対応や開示義務ではなく、企業が自らの競争力や成長戦略、およびその実現可能性を投資家に伝える重要な機会だと捉えていただきたいと思います。
特に人的資本やガバナンスといった要素は、短期的な業績に直結するものではない一方で、中長期的な企業価値を左右する極めて重要な基盤です。
そのため、制度や施策を「福利厚生」や「取り組み紹介」としてではなく、「企業価値向上のための投資」として位置づけ、それがどのように経営戦略の実現に寄与するのかを説明していただくことが重要です。成長戦略・成長投資は企業価値向上に欠かせないものです。その戦略の成否を少数株主の利益を踏まえて監督するのがガバナンス体制です。こうした投資家の見方を前提にESG関連開示を推進していただきたいと思います。
また、開示においては、完璧な状態である必要はありません。むしろ、過去の課題や改善の途上にある点も含めて、経営としてどのように認識し、どのように変革していこうとしているのかを示すことが、投資家との対話を深めるうえで非常に有効です。
投資家は企業の結果だけでなく、「考え方」や「意思決定のプロセス」を重視しています。
経営陣が自らの言葉で方針を語り、戦略と実行がつながっていることが示されれば、開示の質は大きく高まります。
日本株市場がグローバルの投資家から大きな注目を集めている今、開示に先進的な姿勢を実現することで、一緒に日本の資本市場の発展に寄与していければと考えています。