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東京証券取引所(以下、東証)では、「コーポレートガバナンス・コード」として、実効的なコーポレート・ガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめています。
「コーポレートガバナンス・コード」には、その副題「~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」でも表れているとおり、実効的なコーポレート・ガバナンスの実現によって、それぞれの会社における持続的な成長と企業価値向上のための自律的な対応が図られ、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することへの期待が込められています。会社にとって持続可能性を巡る課題への対応はリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であり、かつ積極的・能動的に取り組むよう検討すべき課題であるため、「コーポレートガバナンス・コード」にはESG投資のG(ガバナンス)に限らず、S(社会)とE(環境)に関する項目も含まれています。
2021年6月、東証は「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の提言を踏まえて、コーポレートガバナンス・コードの2回目の改訂を実施しました。本改訂は、企業がコロナ禍を契機とした環境の変化の下で新たな成長を実現すること、また2022年4月に東証において実施する市場区分の見直しを受けて、プライム市場の上場会社に期待される「より高い水準のガバナンス」を示し、企業においてより高度なガバナンスを発揮する後押しをすることを目的としています。その一環として、本改訂では、「企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保」及び「サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取組み」に関する事項が含められました。
ダイバーシティについて、フォローアップ会議の提言においては、「企業がコロナ後の不連続な変化を先導し、新たな成長を実現する上では、取締役会のみならず、経営陣にも多様な視点や価値観を備えることが求められる」「取締役会や経営陣を支える管理職層においてジェンダー・国際性・職歴・年齢等の多様性が確保され、それらの中核人材が経験を重ねながら、取締役や経営陣に登用される仕組みを構築することが極めて重要である」と指摘されました。
また、サステナビリティについては、「中長期的な企業価値の向上に向けては、リスクとしてのみならず収益機会としてもサステナビリティを巡る課題へ積極的・能動的に対応することの重要性は高まっている。また、サステナビリティに関しては、従来よりE(環境)の要素への注目が高まっているところであるが、それに加え、近年、人的資本への投資等のS(社会)の要素の重要性も指摘されている。人的資本への投資に加え、知的財産に関しても、国際競争力の強化という観点からは、より効果的な取組みが進むことが望ましいとの指摘もされている。加えて、投資家と企業の間のサステナビリティに関する建設的な対話を促進する観点からは、サステナビリティに関する開示が行われることが重要である」と指摘されました。
下記は2021年6月に改訂された最新コーポレートガバナンス・コードから、EとS関連の部分を抜粋しています。今後も、上場会社各社におけるコーポレートガバナンス・コードの普及・定着を促すことを通して、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。
上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。
取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。
上場会社には、株主以外にも重要なステークホルダーが数多く存在する。これらのステークホルダーには、従業員をはじめとする社内の関係者や、顧客・取引先・債権者等の社外の関係者、更には、地域社会のように会社の存続・活動の基盤をなす主体が含まれる。上場会社は、自らの持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を達成するためには、これらのステークホルダーとの適切な協働が不可欠であることを十分に認識すべきである。
また、「持続可能な開発目標」(SDGs)が国連サミットで採択され、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同機関数が増加するなど、中長期的な企業価値の向上に向け、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)が重要な経営課題であるとの意識が高まっている。こうした中、我が国企業においては、サステナビリティ課題への積極的・能動的な対応を一層進めていくことが重要である。
上場会社が、こうした認識を踏まえて適切な対応を行うことは、社会・経済全体に利益を及ぼすとともに、その結果として、会社自身にも更に利益がもたらされる、という好循環の実現に資するものである。
原則2-3.社会・環境問題をはじめとするサステナビリティーを巡る課題
原則2-4.女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保
上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。
その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。
上場会社には、様々な情報を開示することが求められている。これらの情報が法令に基づき適時適切に開示されることは、投資家保護や資本市場の信頼性確保の観点から不可欠の要請であり、取締役会・監査役・監査役会・外部会計監査人は、この点に関し財務情報に係る内部統制体制の適切な整備をはじめとする重要な責務を負っている。
また、上場会社は、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。
更に、我が国の上場会社による情報開示は、計表等については、様式・作成要領などが詳細に定められており比較可能性に優れている一方で、会社の財政状態、経営戦略、リスク、ガバナンスや社会・環境問題に関する事項(いわゆるESG要素)などについて説明等を行ういわゆる非財務情報を巡っては、ひな型的な記述や具体性を欠く記述となっており付加価値に乏しい場合が少なくない、との指摘もある。取締役会は、こうした情報を含め、開示・提供される情報が可能な限り利用者にとって有益な記載となるよう積極的に関与を行う必要がある。
法令に基づく開示であれそれ以外の場合であれ、適切な情報の開示・提供は、上場会社の外側にいて情報の非対称性の下におかれている株主等のステークホルダーと認識を共有し、その理解を得るための有力な手段となり得るものであり、「『責任ある機関投資家』の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》」を踏まえた建設的な対話にも資するものである。
原則3-1.情報開示の充実
上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、
(1) 企業戦略等の大きな方向性を示すこと
(2) 経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
(3) 独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うことをはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。こうした役割・責務は、監査役会設置会社(その役割・責務の一部は監査役及び監査役会が担うこととなる)、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社など、いずれの機関設計を採用する場合にも、等しく適切に果たされるべきである。
原則4-2.取締役会の役割・責務(2)
コーポレートガバナンス・コードの詳細については、以下のページをご覧ください。