機関投資家のESG投資

第一生命保険株式会社

第一生命は創業以来、一生涯のパートナー「お客さま第一主義」を経営理念に掲げ、社会やお客さまのニーズの変化にあわせ、その時々における最良な商品・サービスを提供してきており、日本全国のご契約者からお預かりした約38兆円の資金を幅広い資産で運用する「ユニバーサル・オーナー」として、運用収益の獲得と社会課題解決の両立を目指し、ESG投資とスチュワードシップ活動を柱とした責任投資を推進しています。

(ご参考)第一生命の資産運用

第一生命が目指す姿

  • 全国にご契約者を抱え、幅広い資産を保有する「ユニバーサル・オーナー」として、多様なステークホルダーを意識した資産運用を行う必要があると認識しています。
  • 第一生命が担う生命保険事業は、現在と将来の懸け橋として次の世代を守る大切な仕事であると認識しています。こうした中において、我々の最大のステークホルダーは次の世代だと考えており、その将来をサステナブルなものにしていくことが使命だと認識しています。
  • 「一生涯のパートナー」をミッションに掲げる第一生命の重要な取組の一つに責任投資(ESG投資・スチュワードシップ活動)を掲げ取組を推進することで中長期的な投資リターンの獲得と持続可能な社会の実現を目指します。

ハイライト ~責任ある機関投資家として~

責任投資の推進体制

  • 社外委員が過半を占める「責任投資委員会」の審議を経て責任投資に関する方針等を策定するとともに、特に重要な内容については、取締役会や経営会議にも報告を行っています。
  • また、実務担当者で構成される「責任投資会議」における進捗フォロー・議論等を通じて、資産運用部門全体の取組を推進し、PRIの年次アセスメント結果を活用してグローバル水準を踏まえた取組のレベルアップを実施しています。
  • 責任投資に関する企画立案やスチュワードシップ活動を担う責任投資推進部にESGアナリストを配置し、資産横断的なESG分析を実施し、運用執行所管等と連携しています。

ESG投資の基本方針&取組方針

責任投資の基本方針(抜粋)

  • 当社における責任投資は、中長期・ 安定的な運用収益を確保しつつ、すべての人々の幸せの前提となる持続可能な社会の実現に向けて、地域や社会の重要課題の解決に資することを目的とします。
  • 責任投資の推進に必要な体制構築を行うとともに、責任投資活動報告や当社HPなどにおける情報開示、生命保険協会や他の団体・企業が主催する会議・勉強会等への参加を通じ、責任投資に関する活動内容や意見発信を積極的に行うことで、責任投資の「普及促進」に努めます。
(ご参考)責任投資の基本方針icon-block

責任投資の中期取組方針(2024年度迄)

  • 社会課題解決に向けた投融資の更なる拡大を通じて、社会へのポジティブインパクトの創出に貢献
  • 気候変動問題への対応を責任投資の最重要テーマと位置づけ、投融資を通じてGHG排出量削減や脱炭素社会の実現に向けたトランジションに貢献するとともに、エンゲージメントを基軸としたスチュワードシップ活動により、投融資先企業の脱炭素化取組を促進

社会課題の解決に向けた投融資実績と目標

  • 「QOL向上」・「気候変動の緩和」・「地方創生・地域活性化」を中心としたESGテーマ型投融資の累計は2021年度末時点で約1兆3,000億円に到達しました。更なる社会へのポジティブ・インパクト創出に向けて、2024年度末迄に同投融資を2兆円以上に拡大
  • 当社の責任投資における最重要テーマである気候変動問題への対応強化として、気候変動問題の緩和に資する投融資を2024年度末迄に1兆円以上に拡大(2021年度末時点実績:約5,100億円)
  • 当社では、社会課題の解決に資する資産への投融資を通じて、社会へのポジティブ・インパクトの創出に取り組んでいます。
  • 再エネ発電事業・グリーンボンドなどへの投融資を通じた年間のGHG削減貢献量は約106万トンで、これは当社ポートフォリオ (2021年の上場株式・社債・不動産)のGHG排出量の約20%に相当します。

ESG投資の2023年度取組方針

運用ポートフォリオのカーボンニュートラル達成に向けた主な取組み

  • 2050年の運用ポートフォリオのカーボンニュートラル達成に向けて、加盟するネットゼロ・アセットオーナー・アライアンスの目標設定ガイドラインに基づき、5年ごとの中間削減目標を策定し、進捗をモニタリングするとともに、目標設定対象アセットの拡大に取り組みます。
  • また、エンゲージメントを通じて投資先企業の取組みを後押しするとともに、気候変動問題の解決に資する投融資の拡大を通じて、低炭素社会への移行・環境イノベーション創出の後押しを進めていきます。

スチュワードシップ活動の基本的な考え方

  • 「一生涯のパートナー」をグループミッションに掲げる「第一生命らしい」スチュワードシップ活動として、成長ステージ毎に異なる投資先企業の課題に寄り添い、中長期的な企業価値向上の支援に取り組んでいます。
  • スチュワードシップ・コードおよびコーポレートガバナンス・コードの両コードを踏まえ、取組の高度化を積極的に推進しています。

スチュワードシップ活動のプロセス

  • エンゲージメントを重視したスチュワードシップ活動を通じて、投資先の企業価値向上を促し、第一生命の中長期的な投資リターンの向上を目指します。

エンゲージメントの課題進捗フォロー

  • エンゲージメントを踏まえた課題の進捗状況を定期的にフォローし、課題に応じた情報提供の実施などを通じて、投資先企業の課題解決を支援しています。

責任投資に関するより詳細な活動状況についてはこちらをご覧ください。
2022年 責任投資活動報告

議決権行使方針

1. 議決権行使の考え方

第一生命は、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの趣旨を踏まえたうえで、投資先企業の持続的成長と企業価値向上を促すことで中長期的な投資リターン拡大を図ることを目的として、「責任ある機関投資家」として企業との対話を実施し、議決権を行使します。なお、親会社の株主や保険契約者等の利益が不当に害されることがないよう利益相反防止の観点に留意します。

2. 議決権行使において重視するポイント

議決権行使に際しては、以下4つの視点を重視します。

  1. コーポレートガバナンス
    1. 上場企業に対しては、一定水準のコーポレートガバナンスの枠組みを具備するとともに、ガバナンスの実効性を高めるための継続的な取組みを求めます。特に、独立社外取締役を選任し、その助言・監督機能を有効に活用することや、監査役等(監査等委員である取締役を含む、以下同じ)の取締役会への牽制機能を確保することは重要であると考えます。
    2. 重大な法令違反又は反社会的行為等の不祥事を起こした企業については、責任のある取締役および監査役等の責任の明確化が必要であると考えます。
  2. 業績・資本効率
    上場企業は、株主資本を効率的に活用しつつ、持続的な成長を実現していくことが重要であると考えます。従って、業績不振が継続する企業については、企業価値の維持・向上の観点から、企業の変革を促していくことが株主として必要であると考えます。
  3. 株主還元
    上場企業に対しては、成長投資や内部留保の状況を踏まえたうえで、一定水準の配当性向とその持続的向上を期待します。特に、内部留保が厚い一方で、低還元が継続している企業については、株主還元の強化を求めます。
  4. ESG課題
    上記(1)から(3)も含む、企業の中長期的な持続可能性に影響を与えうる環境・社会・ガバナンス等の重要課題(以下、「ESG課題」という)については、対話の重点テーマとし、社会的な責任がある上場企業については特に積極的な取組を求めます。

3. 株主総会付議議案に対する判断基準

  1. 株主総会に付議される議案毎に、原則として「議案に対する考え方」および「議決権行使基準」に基づき判断を行います。ただし、議案毎の「考慮すべき特別な事情」に該当すると判断する場合、または「考慮すべき特別な事情」以外であっても、対話等を通じて合理的な理由があると判断できる場合には、原則と異なる議決権行使を行うことがあります。
  2. 原則と異なる議決権行使を行う場合、または重要な投資先企業・議案等に関する議決権の行使判断を行う場合は、責任投資委員会にて審議または報告を行います。

(ご参考)
議決権行使基準は弊社HPにて開示しておりますのでご参照ください。
スチュワードシップ活動:スチュワードシップ活動(対話・議決権行使)|機関投資家として|第一生命保険株式会社 (dai-ichi-life.co.jp)

エンゲージメント・ESGインテグレーション

各アセットの流動性や特性を踏まえてESGインテグレーションを行っており、更なる高度化に向けて継続的に取り組みを進めていきます。

各アセットの流動性や特性を踏まえ、アセット毎に最適なESGインテグレーションを行い、ESGインテグレーションの高度化に取り組んでいます。
ESGアナリストは、様々なESG課題から重要テーマを選定し、セクター横断的に分析を実施。リサーチ結果をエクイティアナリストやクレジットアナリストへ共有し、各アセットのアナリストは個別企業の評価に反映させています。

エンゲージメントテーマ(ESG)に関する第一生命の考え方

エンゲージメントテーマに関する当社の考え方(環境)

  • 2050年カーボンニュートラル達成へ向けた目標設定、および具体的なロードマップの策定
  • GHG排出量削減の中間的な目標設定(2030年目標等)、および短中期的な期間における具体的な施策
  • TCFD提言への賛同、TCFD提言に基づくガバナンス体制の構築・財務影響を含むシナリオ分析の実施、および開示状況
  • SBT認定取得に向けた取組状況

エンゲージメントテーマに関する当社の考え方(ESG(環境以外))

  • ガバナンス体制の整備
    ・継続的な実効性向上に向けた取組み
    ・独立社外取締役の有効活用、独立社外取締役の十分な人数確保、指名・報酬委員会の適切な関与・助言
    ・取締役会の多様性確保、適正規模
    ・上場子会社では、独立社外取締役の充実など、より実効性のあるガバナンス体制の構築
  • 人権・ダイバーシティ
    ・「人権デュー・ディリジェンス」を通じた自社ビジネスにおける人権リスクの特定・管理
    ・役員・従業員のダイバーシティの確保
  • 自然資本・生物多様性
    ・自社の与える影響の把握や負の影響の極小化へ向けた取組み、戦略や取組体制など
  • 統合的な開示の充実
    ・財務情報と非財務情報(ESGを含む)の統合的な開示の充実
  • 外部環境変化(新型コロナウイルス感染症拡大など)を踏まえたサステナブルな経営戦略の構築

エンゲージメントテーマに関する当社の考え方(経営・財務戦略)

  • 経営戦略
    ・マテリアリティの経営戦略への組込み
    ・中長期のビジョン・戦略や具体的な経営計画の策定、成果を評価する重要指標(KPI)や、その進捗状況の開示
    ・資本コストを把握し、資本コストを上回る資本効率のKPI設定とその達成
    ・経営環境の変化を見据えた戦略的な投資
    ・事業からの撤退・売却を含めた事業ポートフォリオの見直し
  • 財務戦略
    ・中長期的な経営戦略を踏まえた、成長投資、株主還元、内部留保の適切なバランス
    ・株主還元に関する明確な方針策定と、株主還元の充実
    ・中長期的な経営戦略を踏まえた最適な資本構成の認識、資本や手元資金の有効活用
    ・政策保有株式の合理的な検証・縮減

ESGインテグレーション事例(気候変動)

  • 気候変動インテグレーションでは、各企業の定量評価と定性評価を行い、企業とのエンゲージメント結果を考慮したうえで、スコアリングを実施しています。
  • 具体的には、炭素税導入等に伴う業績への影響度の試算(定量評価)、環境技術の有無など将来的なオポチュニティ(機会)等の勘案(定性評価)に加え、気候変動リスクへの取組内容やガバナンス等をエンゲージメントにおいて確認し、評価しています。

企業の開示情報における主な着目ポイント

第一生命は、主に以下の開示資料を参照し、対話におけるアジェンダを検討・設定しております。

統合報告書

  • 企業理念、経営トップの経営に対する想い・長期ビジョン
  • マテリアリティの特定プロセス、ビジネスモデルの持続可能性
  • ESG要素の経営戦略への組み込みと具体的な取組状況
  • 社外取締役の経営に対する見解や活動状況
  • (気候変動に関する開示をしている企業については)TCFDに沿った開示・経営戦略への組込み

有価証券報告書・コーポレートガバナンス報告書

  • 政策保有株式に対する取組(削減方針、資本コストを考慮した定量的な検証、取締役会での検証)
  • 取締役の構成(適正規模、独立社外取締役の人数・割合、多様性の確保)
  • 取締役会の実効性評価(取締役の関与の程度、第三者評価の活用、開示、具体的な改善取組)
  • 指名・報酬(委員会の設置、社外委員の関与、株式報酬制度の活用、業績指標、業績連動報酬の割合)

株主総会招集通知

  • 取締役候補者の略歴(バックグラウンド)、取締役会等への出席状況(低出席率の場合はその理由)

その他ホームページに掲載のIR関連資料・サステナビリティ報告書等

  • 中期経営計画、資本効率を含む定量的なKPIとその進捗状況
  • 財務戦略(新規投資・株主還元・内部留保のバランス)
  • ESGに関するKPI(女性管理職比率・CO2排出削減目標等)とその進捗状況

上場会社へのメッセージ

第一生命は、スチュワードシップ活動のなかでも特にエンゲージメントを重視しており、企業が抱える様々な課題の克服に向けてお役に立てるようなエンゲージメントを実施することで、企業価値向上に向けたご支援をさせて頂きたいと考えております。エンゲージメントに際しては、前述した着目ポイントを主に参照しておりますが、内容を更に充実したものとするためにも、特に以下の観点については、上場会社の更なる取組をお願いさせて頂きたいと考えております。

情報開示に関する事項

  • 財務情報と(ESGを含む)非財務情報の統合的な開示を充実させることは、投資家が企業の現状や今後の方向性を理解するうえで有用であると考えます。
  • 社外取締役が当該企業の経営についてどのような見解を持ち、またどのような活動をされているかを開示することは、投資家が企業の状況を一定の客観性をもって把握するうえで有用であると考えます。

エンゲージメントの実施に関する事項

  • エンゲージメントの結果を企業の戦略や体制等の検討に反映して頂きたいと考えていることから、基本的には執行役員以上、可能であれば取締役との対話を希望しています。また、役員以外の方との対話であった場合には、対話後にその内容を経営層へフィードバック頂ければと考えております。
  • 企業のESGへの取組みに関するエンゲージメントを強化していることから、経営企画部門などでサステナビリティを担当されている方にも対話にご同席頂ければと考えております。

引き続き、第一生命のスチュワードシップ活動にご理解、ご協力を賜りますようよろしくお願い致します。