機関投資家のESG投資
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)
GPIFとは
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、厚生年金保険と国民年金の給付の財源となる年金積立金をお預かりして管理・運用を行い、その収益を国に納めることにより、年金事業の運営の安定に貢献します。
日本の年金制度は現役世代が納める保険料で、その時々の高齢者世代に年金を給付する「賦課方式」を採用しています。もっとも、日本では少子高齢化が急速に進んでいるため、将来世代の負担が大きくなりすぎないよう、年金保険料のうち支払いに充てられなかったものを年金積立金として積み立てて、将来にわたって安定的に年金給付ができるよう財政運営がなされています。
GPIFはこの積立金を国内外の資本市場で運用して増やしています。年金積立金の運用収益や元本は概ね100年の年金の財政計画のなかで、将来世代の年金給付を補うために使われます。年金財源全体のうち、積立金から賄われるのは1割程度です。年金給付に必要な積立金は十分に保有しており、ある特定年度に評価益又は評価損が発生したとしても、それが翌年度の年金給付額に反映されることはありません。
GPIFのサステナビリティ投資とは
GPIFは、2014年の⽇本版スチュワードシップ・コード受け入れ及び2015年の責任投資原則(PRI)署名以来、ESGを考慮した投資やスチュワードシップ活動を推進してきました。
GPIFが2024年に受け入れたアセットオーナー・プリンシプルでは、サステナビリティ投資方針の策定がサステナビリティに関する取組みの一例として挙げられています。また、厚生労働大臣が指示する第5期中期目標(2025-2029年度)においても、サスナビリティ方針の策定や、インパクトを考慮した投資の検討が新たに求められました。以上を踏まえ、GPIFは2025年3月31日にサスナビリティ投資方針を策定しました。
サステナビリティ投資方針では主な取組内容として以下の6つの取組みを挙げています。
サステナビリティに関する課題は、特定の企業やアセットクラスのみに影響するものではないことから、GPIFでは、全資産について、サステナビリティ投資を推進します。その際には、資産特性に応じて、以下に掲げるような様々な手法を使い分け、また組み合わせることで、より効果的なアプローチを追求します。
- ESG インテグレーション
- エンゲージメント・議決権行使
- ESG 指数投資・ESGファンド投資
- インパクトを考慮した投資
- サステナビリティに関するリスク分析(気候変動等)
- 関係団体等との協働等
様々な取組みを行っていますが、ここでは、関係団体との協働も含めたインベストメントチェーンの好循環の促進、ESG指数投資、企業の皆様にもご協力いただいている企業向けアンケートについてご紹介します。
GPIFが目指すインベストメントチェーンの好循環
GPIFは、国民の皆様から寄託いただいた年金積立金のアセットオーナーとして、サステナビリティ投資方針に基づき、6つのイニシアティブを推進しています。
運用受託機関には、投資先企業の持続的な成長に資する「建設的な対話」(エンゲージメント)を実施するよう促しています。GPIF自身も国内外のアセットオーナーや経済団体などと対話や協働を積極的に行います。
これにより長期的な企業価値向上が促進され、「経済全体の成長」と「長期的な投資収益の拡大」につながるインベストメントチェーンの好循環の促進を目指し知ています。
関係機関との連携強化
GPIFは、法令の範囲内で、国内外のアセットオーナーやイニシアティブ、機関投資家団体、経済団体などと対話や協働を行うことも重要であると考えています。このような幅広い市場関係者と継続的に対話・協働を行っていくことなども通じて、インベストメントチェーンの好循環の構築を目指すことで、スチュワードシップ責任を果たします。以下は、GPIFが参加している団体です。
GPIFが採用しているESG指数
GPIFは、ポートフォリオのESGリスクの低減を通じた長期的なリスク・リターンの改善等を目的として、ESG指数に基づく運用を行っています。GPIFは2017年度から、ESG指数投資を行っています。企業の持続可能性に着目した指数に基づく運用を行うことで、ESG評価の改善などを通じた株式市場の底上げ効果が期待できると考えています。GPIFは2025年3月末現在、国内株式・外国株式の合計で以下9つのESG指数を採用しています。
~国内株式:ESG総合指数~
~国内株式:ESGテーマ指数(女性活躍/気候変動)~
~外国株式:ESG総合指数及びESGテーマ指数(女性活躍/気候変動)~
サステナビリティ投資報告
ESG投資の「PDCA(計画→実行→評価→改善)サイクル」を適切に回すためには、ESG評価の向上や企業のESG対応の強化が金融市場の持続可能性向上やリスク調整後のリターンの向上につながっているのかを正しく評価する必要があります。
ESG投資が期待通り、ESG評価の向上や企業のESG対応の強化につながっているのかを中心に分析し、これまで、ESG活動報告で毎年開示を行っています。2025年度は、「ESG活動報告」を「サステナビリティ投資報告」に衣替えし、2025年8月29日に公表しました。環境分野における気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿った分析に加え、社会分野、ガバナンス分野も含めたサステナビリティ関連財務情報の開示状況に関する分析等を実施しています。
運用受託機関と企業の対話の促進に向けた取組例<企業向けアンケートの実施>
2016年1月に、GPIFの運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する評価と「目的を持った対話」(エンゲージメント)の実態把握を目的として、JPX日経400インデックス採用企業向けに初めてアンケートを実施し、第3回アンケート(2019年実施)から、より多くの企業の生の声を集めるため、対象を東証一部上場企業に拡大しました。現在はTOPIX構成企業を対象に毎年1月に実施しておりますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
第10回アンケート概要
- 対 象: TOPIX構成企業(2025年1月31日時点) 1,696社
- 回答社数: 632社
- 回 答 率 : 37.3%
- 回答期間: 2025年1月17日~3月21日
(以下アンケート結果より抜粋)
- 質問9: 貴社のESG活動における主要テーマを最大5つお教えください。
上場会社へのメッセージ
GPIFは、法律で株式のインハウス運用が許されていないため、運用受託機関を通じて、投資や議決権行使を実施しています。そのため、運用受託機関と投資先との間での対話を促進しています。対話を効率的に進めるにあたって、情報開示は双方にとって重要なものと考えています。特にサステナビリティ情報の開示は非財務の重要性が高まるにつれ、今後、その重要性がより増していくと思われます。
運用受託機関に対しては、重大なESG課題や、優れたサステナビリティ開示や改善度の高いサステナビリティ開示をアンケートで確認し、公表しております。また、TOPIX構成企業の皆様を対象として、「機関投資家のスチュワードシップ活動に関するアンケート」(企業向けアンケート)を実施し、運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する評価とエンゲージメントの実態等をお聞きしています。こうした双方向の活動を通じて、サステナビリティも考慮に入れた建設的な対話(エンゲージメント)が進むよう、アセットオーナーとして努めてまいります。
企業向けアンケートは毎年1月頃に実施しており、GPIFにとって、企業の皆様の生の声を伺える貴重な機会となっておりますので、ぜひご回答をお願いできればと存じます。
