機関投資家のESG投資

ニューバーガー・バーマン株式会社

ニューバーガー・バーマンについて

ニューバーガー・バーマンは、1939年に米国・ニューヨークで創業し、グローバルにビジネスを展開する、従業員が自社株式を100%保有するプライベート経営の資産運用会社です。株式、債券、プライベート・エクイティ、マルチアセット、不動産等の多岐にわたる運用戦略を、世界中の機関投資家やアドバイザー、個人投資家等にご提供しています。「日本株式ESGエンゲージメント戦略」を運用する日本株式運用部は、徹底したファンダメンタルズ分析と投資先企業との建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)を通じて、企業価値の向上と、資本市場ならびに日本社会の発展への貢献を追求しています。

ニューバーガー・バーマンの紹介icon-block

ESG投資の方針

ニューバーガー・バーマンは、創業以来、「お客様に長期的に優れた運用パフォーマンスを提供する」ことを追求してきました。アクティブ運用マネージャーである当社は、環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する重要なファクターは、投資機会の創出とリスク管理の観点から、長期の投資リターンに寄与すると考えています。したがって、当社はお客様の資産を運用するにあたり、ESGを考慮した評価基準(ESGファクター)を投資プロセスに組み入れること(インテグレーション)を含む、包括的なアプローチを採用しています。また、ESGファクターがポートフォリオに与える影響は、運用パフォーマンスと同様に、多くの投資家にとって考慮すべき重要な要素であると考えています。ESG投資の方針やその取り組み等の詳細につきましては、「環境、社会、ガバナンス(ESG)ポリシー」、ESG投資哲学および「ESG年次報告書」をご参照ください。

環境、社会、ガバナンス(ESG)ポリシー(PDF)icon-block
ESG投資哲学およびESG年次報告書icon-block

スチュワードシップの方針

ニューバーガー・バーマンは、責任ある資産運用会社として適切にスチュワードシップ責任を果たすため、2017年5月に改訂され、金融庁が公表した「責任ある機関投資家」の諸原則<日本版スチュワードシップ・コード>を受け入れることを表明しました。また、2020年3月に金融庁より公表された再改訂版の内容を踏まえて、同コードの各原則(指針を含む)に基づく公表項目を見直し、その旨も公表しています。

当社は、投資先企業との建設的なエンゲージメントや投資先企業に対する議決権行使等を通じて、中長期的な視点から当該企業の企業価値向上やその持続的成長を促し、顧客の中長期的な投資リターンの拡大を図るとともに、経済の成長に結びつく資金の適切な供給を通じて、企業の持続的成長と産業の発展に貢献し、社会的使命を有する資産運用会社としての責任を果たすことを表明しています。当社のスチュワードシップ活動状況につきましては、「スチュワードシップ活動状況と自己評価」をご参照ください。

スチュワードシップ活動状況と自己評価icon-block

議決権行使の方針と事前開示

ニューバーガー・バーマンは、議決権行使におけるアプローチを「ガバナンスおよびエンゲージメント原則」において体系的に定め、議決権行使に関する見解を「コーポレート・ガバナンス、議決権行使ガイドライン」において示しています。

当社は、議決権行使をエンゲージメントの重要な一部と位置づけており、議決権行使を通じたエンゲージメントの実施は、顧客の最善の利益を目指した受託者責任を徹底することであるとともに、株主価値の創出に対するアプローチにおいても重要な要素であると考えています。また、エンゲージメントの本質は、コーポレート・ガバナンス活動に重点を置いた投資家と投資先企業の対話を通じて、企業に建設的な影響を及ぼすことにより、長期的に持続可能な投資リターンの創出を目指すところにあるという信念を持っています。

当社の議決権行使は、エンゲージメントを担当する専門チームや外部の議決権行使助言会社の助言をもとに機械的に実施するのではなく、エンゲージメントを主導するポートフォリオ・マネジャーとアナリスト自身が、独自のガイドラインと分析に基づいて行います。また、2020年には、議決権行使を通じた受託者責任の遂行とより広範なインパクト創出を目指し、大手資産運用会社としては初となる議決権行使判断の事前開示を開始しました。これは、投資先企業の年次株主総会に先立ち、当社が顧客に代わって実施する議決権行使の論理的根拠と目的を体系的且つ具体的に公表することを通じて、議決権行使の判断における透明性と説明責任を強化するものです。議決権行使判断の公表にあたっては、投資先企業に対するエンゲージメントの状況を考慮し、社内で慎重な検討を重ね、経済的・社会的なインパクトが大きい提案議案にフォーカスしています。重要な提案議案に対する当社の見解、意思や期待を企業と共有し、企業の行動や経営陣のリーダーシップに対する支持を公然と示すことによって、多くの企業がポジティブな変革を推進し、望ましい成果をあげることを支援するとともに、ひいては、投資先企業に対するエンゲージメントの質の向上に資する好循環が生まれると考えています。

「ガバナンスおよびエンゲージメント原則」および「コーポレート・ガバナンス、議決権行使ガイドライン」、議決権行使事前開示の詳細につきましては、こちらをご参照ください。

ガバナンスおよびエンゲージメント原則(PDF)icon-block
コーポレート・ガバナンス、議決権行使ガイドライン(PDF)icon-block
エンゲージメントと議決権行使icon-block

どのようなESG情報をどのように投資判断に活用しているか

ニューバーガー・バーマンが運用する日本株式戦略は、クオリティの高い企業への長期投資を通じて短期的な市場のノイズを捨象し、エンゲージメントを通じた株主価値の創出を追求しています。同運用戦略における投資判断の中でも極めて重要なプロセスが、投資先企業の分析と評価です。企業の皆様が開示されている財務情報やESG関連資料に基づき、担当ポートフォリオ・マネジャーおよびアナリストが独自の視点で企業価値の分析と評価を行っています。

投資先企業の評価項目

企業価値の評価においては、財務的情報とマテリアリティ(非財務的情報)の両面で分析を行います。

財務的情報の評価に関しては、「バリュエーション」の評価とともに、企業の「クオリティ」を多面的に評価します。当社が考える「クオリティ・カンパニー」とは、利益率と資本収益性が国内外の競合他社に比べて高く、事業の中長期的且つ持続的な成長が見込める企業です。昨今、様々な経済や自然環境の影響、地政学的リスクが散見されるなか、いかなる外部環境に置かれても、企業価値の向上を継続するための健全なバランスシートを持つ点も重要な要素です。経営体制の強靭性や執行力にも注目しています。また、中期経営計画の進捗状況を分析し、企業の経営陣が長期的な「あるべき姿」に向けて、経営が行われているかを判断しています。

マテリアリティの評価に関しては、主に「ガバナンス」と重要性の高い「環境(E)」および「社会(S)」課題の二つに分類されます。

まず、ガバナンスの評価に関しては、独立性と多様性(例:ジェンダー、スキルの多様性等)、取締役会を含める組織・体制(例:機関設計、報酬・指名委員会の設置等)と長期ビジョンに着目しています。取締役会については、最善の意思決定と監督を実現するために、関連する職務経験と職責を果たす上で必要な適性を有し、独立した、多様な取締役を中心に構成され、また定期的な役員の一新や委員の交代がなされるべきであると考えています。こうした取締役会における実効性の確保が、株主利益を守り、高めることに寄与し、さらには企業業績の向上と株主価値の創出につながるという信念のもと、当社が投資先企業の取締役会の分析と評価をする際に重視し、取締役会に不可欠であると考える資質の一例を、以下にお示しいたします。

  • 客観的且つ有意義な議論が効果的に行われること
  • 伝統的なリスクと抽象的なビジネスリスクの両方を検討することができること
  • 複雑な環境下での業務執行経験があること
  • 最高水準の倫理基準を持ち、且つ、他者にもそれを遵守させることができること
  • 株主のみならず、顧客や従業員、コミュニティといったステークホルダーから信頼され、その代弁者として株主を代表していることが担保されていること

次に、重要性の高いE・S課題の分析にあたっては、独自のE・SデータベースやSASB(米国サステナビリティ会計基準審議会)によるマテリアリティのフレームワーク等を参考にして、各企業のファンダメンタルズに応じた課題を特定します。課題の特定後は、担当ポートフォリオ・マネジャーおよびアナリストが、マテリアリティ・マトリックス等に基づいてその優先順位を特定し、定量的且つ定性的な評価を行います。

こうした財務的情報の評価およびマテリアリティ評価は、全ての投資ユニバース企業に対して実施しています。徹底したボトムアップ・リサーチを通じて、クオリティ、バリュエーション、ガバナンス、重要性の高いE・S課題、エンゲージメント・ポテンシャル(エンゲージメントによる株主価値向上の期待)を評価してそれぞれをスコア化し、総合スコアが高い順に、高い組入れ比率で投資を行います。このスコアリングについては、原則として年6回(毎四半期の決算報告関連、エンゲージメントを目的とした会社訪問2回)実施する投資先との対話を通じて見直します。

当社日本株式運用チームが、企業価値を分析する際に参考にしている代表的な開示資料は、以下の通りです。

日本株式運用チームが参考にする企業の開示資料と該当する投資判断の評価項目 Excel

当社日本株式運用チームの投資判断におけるSASBのマテリアリティ・フレームワークの活用方法につきましては、こちらにてご紹介しています。

日本の中小型株式投資戦略におけるSASB基準のインテグレーション/SASB ESG Integration Insights - 2020 Edition寄稿・日本語訳(PDF)

企業とのエンゲージメントの方針・アプローチ・テーマ等

ニューバーガー・バーマンは、投資先企業の経営陣に対するエンゲージメントは、長期的視点からアクティブ運用を行う投資家として、必要不可欠なものであると考えています。特に、ESG課題についてエンゲージメントを行うことは、企業業績を向上させ、事業リスクを低減することに寄与する可能性があると考えています。このような背景から、当社では、企業経営陣とESGの課題に関する継続的なエンゲージメントを行う責務は、ポートフォリオ・マネジャーおよびアナリストが担うこととしており、独立したエンゲージメント専任チームを擁していません。運用担当者がエンゲージメントを統括することにより、投資先企業の財務戦略とマテリアリティの両方に着目した対話が実現し、企業の長期的且つ持続的な企業価値の向上につながると考えています。

当社日本株式運用チームが行うエンゲージメントは、目標の達成までに比較的長期にわたるプロセスを経ることから、「マイルストーン・システム」を導入し、アジェンダごとに進捗状況を管理しています。

エンゲージメントにおけるマイルストーン・システム

また、エンゲージメントのテーマは、上述の財務評価およびマテリアリティ評価をベースに決定し、実施しています。

2020年に日本株式運用チームが実施した主なエンゲージメントのテーマは、以下の通りです。

  • ガバナンス(独立性、スキル・ジェンダーの多様性等)
  • 社会的責任(人的資本、労働慣行、従業員エンゲージメント、多様性等)
  • 資本収益性(バランスシート効率、事業ポートフォリオ改革等)
  • リーダーシップ・ガバナンス(ビジネス倫理等)
  • 環境(再生可能エネルギー、温室効果ガス削減等)

上場会社のESG情報開示の現状をどうみているか、開示してほしい情報

近年、日本企業の情報開示は改善の傾向にあり、特にガバナンスに関しては欧米諸国の水準に近づいてきています。一方、企業の持続的な成長を評価する投資家として、現状の開示には改善余地があるとみています。以下に、当社が考える改善点の一例を記載します。

資本収益性

「伊藤レポート」や「コーポレート・ガバナンスコード」の制定を背景に、企業のROE(株主資本利益率)やROIC(投下資本利益率)に対する理解度が向上している印象を受けます。統合報告書や決算説明会資料等においても、経営指標の一つとしてROEやROICに関する記載も多く見られます。一方、ROEやROICの持続的な向上を追求する上で欠かせないのは、その構成要素の分析です。ROEやROICを経営指標として参照している企業には、デュポン分析やROICツリーをご活用いただき、より深化した財務戦略の開示を期待しています。また、株主に対する価値創出(ROEやROICの資本コストに対する超過リターン)を客観的に判断するためにも、比較対象となる資本コストの開示を推奨しています。

ガバナンス

当社日本株式運用チームでは、「ガバナンスの質」を評価するファクターとして、取締役会の構成や、スキルおよびジェンダーの多様性に注目しています。昨今、企業の独立性やコーポレート・ガバナンスコードへの対応に関する開示は増えているものの、多くの企業では、依然として取締役会の構成や多様性に関する説明が乏しく、改善の余地があると考えています。また、過去数年間、女性取締役および監査役を選任する企業が増えており、取締役会の多様性の向上につながっている点を評価しています。一方で、女性役員が比較的少ない日本の現状において、女性取締役および監査役の兼職数の問題に加え、経営戦略の活発な議論に必要な知見の不足やスキルの不一致も指摘されています。今後、持続的な「ガバナンスの質」の向上を実現するためにも、スキルマトリックス等の計測ツールをご活用いただき、取締役会の多様性と必要なスキルが網羅されているかを検証することが望ましいと考えます。さらに、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定とその詳細の開示も強く推奨しています。特に、女性活躍推進に対する経営トップのコミットメント、女性役員数および管理職比率の中長期目標、その達成に向けて取り組んでいる働き方の多様化やキャリアアップ支援策を含む行動計画等に注目しています。

重要性の高いE・S課題

近年、ESG評価機関による日本企業のガバナンス開示スコアは改善の傾向を見せているものの、E・Sの開示スコアは欧米企業に比べて依然劣後しています。その原因と本質的な課題としては、開示を行う企業側におけるマテリアリティの特定や優先順位付けが不十分であるため、仮に開示がなされていても、投資家が重視しているE・S課題との間に認識のズレが生じてしまうことが挙げられます。限られた経営資源で効率的にE・S課題への取り組みや開示を進めるためにも、マテリアリティの特定や優先順位付けを早期に行うことを推奨します。さらには、日本語での開示に加えて英語での開示も行い、海外の投資家やESG評価機関に適切な評価を受ける体制を整備することが重要であると考えています。

上場会社へのメッセージ

当社日本株式戦略の運用チームがエンゲージメントを行っている投資先企業の中には、これまでESG課題にほとんど取り組んだ経験がなく、開示に対して必ずしも積極的ではない企業が多くありました。そのような企業にESG課題への取り組みを提言する上では、まず社内の状況を把握することを心がけています。特に、経営トップのコミットメントや経営資源等についてヒアリング等を行い、投資先企業が継続的にESGの取り組みを進める態勢や意欲があるかを判断し、実現可能なペースで資本収益性、ガバナンスや重要性の高いE・S課題への取り組みや開示を行うことを要請しています。初回のミーティングにおいては、「開示をしたくても何から始めていいのか分からない」、「経営資源が限られていて、人や予算を回せない」等のコメントを伺うことが頻繁にあり、改善の意欲はあるものの、リソース不足や社内調整の難しさを理由に実行に至らないといった状況が見受けられます。しかし、同様のお悩みを抱えていた企業でも、限られた経営資源の中で着実に前進し、十分な成果を導出した取り組み事例がございます。当社日本株式運用チームは、投資先企業に対するエンゲージメントにおいて、国内外のベストプラクティスを交えながらそのような取り組みを共有してまいりました。さらに、企業におけるマテリアリティの特定やスキルマトリックスの策定、社外取締役の選考等、実務的なサポートも積極的に行っています。ESGを含むサステナブルな経営の実現には時間とリソースを要し、またその過程において様々な逆風が吹くことも予想されますが、当社の長期投資家としての活動を通じて、持続的な企業価値向上に貢献することができれば幸いです。

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