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2023/11/30 東証OSE 三木証券株式会社に対する処分等について

 

三木証券株式会社(以下「同社」という。)に対して、株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所が、下記のとおり処分を行うとともに、業務改善報告書の提出を請求しましたので、お知らせいたします。
なお、本件は、日本取引所自主規制法人の審議結果に基づき決定したものです。

内容

東京証券取引所における処分

  • 戒告(東京証券取引所取引参加者規程第34条第1項第8号に基づく)

大阪取引所における処分

  • 戒告(大阪取引所取引参加者規程第42条第1項第10号に基づく)

理由

同社は、顧客層の高齢化により口座数が減少傾向にあったことなどもあり、2017年3月期から2020年3月期まで4年連続の営業赤字となっていた。そのような中、米国市況が好調であったことを踏まえ、2020年4月以降、経営陣主導の下、主に米国株式の販売に注力していた。
このような中、以下の状況が認められた。

  1. 適合性原則に抵触する勧誘が行われている状況

    同社は、少なくとも顧客18名に対し、会話がかみ合わない、数分前の会話を覚えていないなどといった顧客の様子から、顧客が少なくとも外国株式取引を行えるほどの認知判断能力を持ち合わせていないと認識していたにもかかわらず、外国株式のリスク等について、顧客属性に照らして顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明を行うことなく金融商品取引契約を締結する行為を行っていた。このような外国株式取引の勧誘を長期的・継続的に行っている状況が認められた。
    また、同社は新興国のテクノロジー関連企業へ投資する投資信託の勧誘に際し、少なくとも顧客1名に対し、当該商品の概要やリスク等について、顧客属性に照らして顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明を行うことなく金融商品取引契約を締結する行為を行っている状況が認められた。


  2. 適合性原則を遵守するための態勢が不十分な状況

    ① 営業推進態勢が不適切な状況

    同社は、2019年6月に営業員評価制度の見直しを行い、同社の収益の向上に貢献した営業員をこれまで以上に高く評価する仕組みを導入して、手数料収入実績をダイレクトに評価に反映させ重視することとした。さらに2022年1月には、評価項目から法令違反行為や顧客本位に欠ける営業を行った営業員の評価を下げるといったコンプライアンス項目を削除するなど、手数料収入額が多い営業員がさらに高く評価される報酬体系へと変更することで、手数料収入に偏った不適切な投資勧誘行為を助長するものになっていた。また、経営陣主導で主に米国株式の販売に注力する中で、取締役営業本部長を中心とした経営陣からは、各部支店長に対して、顧客の適合性を軽視した営業優先の指示が行われるなど、経営陣から収益達成への過剰な圧力がかけられていた。これらの結果、同社には顧客の適合性を軽視した極端な営業優先の企業風土が形成されており、営業推進態勢は不適切な状況であった。

    ② 法令等遵守態勢が不適切な状況

    同社では、極端な営業優先の企業風土のもと、営業部門に対し異論を述べた結果、営業本部が主導する形で就業規則に基づかずに降格させられた者がいるなど、コンプライアンス上の問題点を声に出しづらい社風となっていた。
    また、赤字体質からの脱却と継続的な黒字化を図るため、代表取締役社長自らが主導して、コンプライアンス部門の人員を削減しているところ、2018年に行われた自主規制機関の検査においてコンプライアンス部門の人員不足を指摘されていたにもかかわらず、コンプライアンス部門の人員を2018年当時と比較しても半数以下にまで削減しており、適切な人員の確保すら行われていない状況にあった。
    このような状況にあったため、自主規制機関が定める高齢顧客ガイドラインで求められている確認事項に関しても、役席者は挨拶程度の短い会話を行うのみで、高齢顧客の健康状態や商品の理解度などについてほとんど確認しておらず、承認手続きは形骸化していた。また、内部管理責任者によるモニタリングも営業を優先するあまり形式的な確認にとどまっており、さらに、内部監査によるモニタリングも、部支店に対し、指摘対象となった具体的な取引、営業員、役席者を特定して伝達することなく、指摘事例について今後は適切に面談を実施すべき旨を形式的に指導するにとどめているなど、不十分なものであった。
    内部管理統括責任者自身が、モニタリングや内部監査の実効性に疑問を持ちながらも、やらないよりはやった方が良い程度の認識でモニタリングや内部監査を続けていたと述べるとおり、同社のモニタリング及び内部監査は形骸化しており、実効性のある検証は行われておらず、同社の法令等遵守態勢は不適切な状況であった。

    ③経営管理態勢が不適切な状況

    金融商品取引業者は、法令等遵守態勢の整備に努め、投資者保護に欠けることのないように経営を行うことが求められているところ、代表取締役社長をはじめ経営陣は、極端な営業推進を行う中で、法令等遵守及び内部管理態勢の確立・整備が後回しとなり、営業に物が言えない、経営陣に実態を正確に報告できないといった脆弱な内部管理態勢を看過しているなど、同社の経営管理態勢は不適切な状況であった。


上記(1)の行為は、金融商品取引法(以下「金商法」という。)第38条第9号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第1号の「顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明をすることなく、金融商品取引契約を締結する行為」に該当すると認められる。

上記(1)(2)の状況は、適合性原則に抵触する不適切な業務運営を継続的に行っていたものと認められ、同社における勧誘販売状況は、金商法第40条第1号の「顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けることとなるおそれがあること」に該当すると認められる。

お問合せ

株式会社東京証券取引所 株式部取引参加者室
電話:03-3666-0141(代表)