インサイダー取引とは
インサイダー取引とは、上場会社の関係者等が、その職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して、自社株等を売買することで、自己の利益を図ろうとするものです。そうした情報を知らされていない一般の投資者は、不利な立場で取引を行うこととなり、証券市場の信頼性が損なわれかねないため、金融商品取引法で禁止されており、違反者には証券取引等監視委員会による刑事告発や課徴金納付命令の勧告が行われます。
インサイダー取引の監視
日本取引所自主規制法人では、現物市場(東京証券取引所)やデリバティブ市場(大阪取引所)でインサイダー取引が行われていないかチェックするため、株式の発行、倒産、合併及び決算に関する情報等、投資者の投資判断に重大な影響を与える会社情報(重要事実)が公表された全ての銘柄を対象として、その売買動向等を日々分析しており、インサイダー取引と疑われる取引については全て証券取引等監視委員会に報告しています。
こうした取組みを「売買審査」といい、当法人では重要事実が公表された銘柄を幅広く抽出したうえで、投資者の属性情報や売買状況等の詳細な分析を行い、インサイダー取引と疑われる取引を絞り込んでいます。
インサイダー取引の未然防止
インサイダー取引を未然に防止するためには、上場会社において、
- 投資判断に重大な影響を与える会社情報の適時開示に積極的に対応すること(適時適切な開示)
- 未公表の会社情報が他に漏れたり不正に利用されたりすることのないよう社内体制を整備すること(適切な情報の管理等)
- インサイダー取引規制の意義や内容について役職員等に周知徹底を図ること(規制の正しい理解)
の3つを徹底することが重要です。役職員によるインサイダー取引は、市場における自社の株式への信頼を損ない、かつ、深刻な会社のイメージダウンに繋がるため、これらは上場会社のコンプライアンス上も極めて重要な問題であることを十分に認識する必要があります。
上場会社においては、自社の役職員による株式等の売買、法人行為としての自己株式取得など、証券市場と関連する様々な行為に対して、法令等の十分な知識を持ち臨んでいただくことはもとより、近時の状況を踏まえ、インサイダー取引未然防止のための情報管理をより一層徹底いただくよう、お願いいたします。
※近時のインサイダー取引事例についてはこちらをご参照ください。
当法人では、役職員による自社株売買に関する社内ルールの策定や社内体制の構築に関し、上場会社各社の状況を取りまとめたアンケート調査報告書を公表しており、個別のご相談にも対応しています。
また、定期的なインサイダー取引規制セミナーの開催やご要望に応じて社内研修講師を派遣する等の対応も行っております。規制内容の解説冊子や未然防止のための啓発ポスターなどもご用意しておりますので、ぜひご活用ください。
インサイダー取引のFAQ
当法人の相談窓口に寄せられたご質問とその回答を取りまとめました。
なお、本FAQはインサイダー取引規制に関する考え方のポイントを一般論として示したものであり、実際の事案における事実関係によっては異なる結論となる場合があり得ることにご留意ください。また、インサイダー取引規制の対象とならない取引であっても、他の法令やモラルの観点から問題がないことを意味する訳ではないことにもご留意ください。
また、金融庁及び証券取引等監視委員会が、インサイダー取引規制の基本的な内容や実務上問題となる論点に関する法令解釈の指針等に係るQ&Aを公表していますので、こちらも併せてご参照ください。
相場操縦取引に関するご質問は、以下のリンク先ページをご覧ください。
ご参考
インサイダー取引に関するよくある質問(0.3MB) |
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1. 規制対象となる者
2. 規制対象となる取引
3. 規制対象となる有価証券
4. 重要事実
※重要事実の一覧およびインサイダー取引規制関連法令等はこちらを参照ください。
5. 公表
6. 罰則等
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Q1.
インサイダー取引の罰則等
インサイダー取引規制に違反した場合、どのような罰則がありますか。
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A1.
5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれらの併科になります。また、法人の代表者又は法人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人の計算でインサイダー取引規制に違反した場合には、その法人に対して5億円以下の罰金刑が科されます。
また、インサイダー取引規制違反によって得た財産は原則として没収又は追徴されます。例えば、インサイダー取引により200万円で買い付けた株式を売却することによって300万円を得た場合には、300万円が没収又は追徴の対象となります。
このほか、罰則ではありませんが、規制の実効性確保のため、行政上の措置として、インサイダー取引規制に違反して自己の計算で有価証券の売買等を行ったものに対して、金融庁から課徴金納付命令が出されます。これにより、違反行為によって得た経済的利益相当額を基準として定められた方法によって算出された金額を国庫に納めることになります。
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Q2.
インサイダー取引規制の時効等
インサイダー取引規制違反の時効はいつ成立しますか。
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A2.
公訴時効は、売買等(買付け等又は売付け等)が行われた日から5年を経過することによって完成します。また、課徴金納付命令に先立つ審判手続開始の決定の除斥期間についても同様です。
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Q3.
課徴金と刑事罰の関係
インサイダー取引規制に違反した場合、一つの違反行為が課徴金と刑事罰の両方の対象とされることはありますか。
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A3.
法令上は、一つの違反行為を課徴金と刑事罰の両方の対象とすることも可能となっています。
ただし、刑事罰としてインサイダー取引により得た財産の没収又は追徴が行われている場合は、当該財産の価額に相当する金額を課徴金の額から控除するなどの調整がなされることになっています(金融商品取引法第185条の7第15項、第185条の8第1項)。
7. 社内ルール等
上記の各Q&Aにおける記述は、特に言及のない限り、会社関係者等のインサイダー取引規制(金融商品取引法第166条)を前提としており、公開買付者等のインサイダー取引規制(金融商品取引法第167条)に関する検討にあたっては、別途の考慮が必要となる場合があり得ることに御留意ください。
また、上記の各Q&Aにおける結論は一般論であり、前提となる事実関係が異なれば、上記と異なる結論となる場合もあり得ることに御留意ください。
知る前契約・計画
2015年9月16日、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令が改正され、いわゆる「知る前契約・計画」に係るインサイダー取引規制の適用除外の範囲が拡大されています。
インサイダー取引規制により、未公表の重要事実を知った会社関係者等の売買は禁止されていますが、「知る前契約・計画」の要件を満たして売買を行った場合、インサイダー取引規制の適用除外となります。
詳細については以下に掲載しているよくある質問とリンクをご覧ください。
知る前契約・計画に関するよくある質問(0.2MB) |
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インサイダー取引規制の適用除外範囲の拡大に係る活用事例等説明会