上場会社の適格性の維持

上場管理部の業務内容

金融商品市場に上場している金融商品は、不特定多数の投資者の投資対象となります。そこで、日本取引所自主規制法人(以下「JPX-R」という)上場管理部は、投資者保護の観点から、上場金融商品の投資対象物件としての適格性を維持・向上させるために、主に以下の業務に取り組んでいます。

  1. 適時開示に係る審査
  2. 企業行動規範に係る審査
  3. 上場会社等に対する措置等の決定
  4. 上場廃止に係る審査

適時開示に係る審査

金融商品市場の機能が適切に発揮されるためには、市場の公正性と健全性に対する投資者の信頼が確保されていることが必要です。そのためには、有価証券等について適時に適切な投資判断材料が提供されていることが不可欠となります。そして、投資者に投資判断材料を提供ための制度としては、金融商品取引法に基づく法定開示制度(有価証券報告書など)と、金融商品取引所における適時開示制度があります。適時開示制度は、金融商品取引所の規則により、上場会社が重要な会社情報を投資者に提供するために設けられているものであり、投資者に対して、報道機関等を通じてあるいはTDnet(適時開示情報伝達システム)により直接に、広く、かつ、タイムリーに伝達するという特徴があります。

  • 適時開示制度につきましては、以下をご参照ください。
会社情報の適時開示制度

上場管理部は、上場会社による重要な会社情報の開示の適正性を確保するために、次の観点から、適時開示に係る審査を行います。

適時開示に係る審査のポイント

  1. 開示の時期が適切か否か。
  2. 開示された情報の内容が虚偽でないかどうか。
  3. 開示された情報に投資判断上重要と認められる情報が欠けていないかどうか。
  4. 開示された情報が投資判断上誤解を生じさせるものでないかどうか。
  5. その他開示の適正性に欠けていないかどうか。

企業行動規範に係る審査

投資者保護及び市場機能を適切に発揮する観点から、上場会社は、金融商品市場を構成する一員としての自覚を持ち、適切な企業行動をとることを求められています。
そこで、東京証券取引所(以下「東証」という)は、東証市場に上場する会社として求められる企業行動の原則を、「企業行動規範」として有価証券上場規程に定めています。
「企業行動規範」は、上場会社として最低限守るべき事項を明示する「遵守すべき事項」と、上場会社に対する要請事項を明示し努力すべき事項を明らかにする「望まれる事項」により構成されており、「遵守すべき事項」に違反した場合には措置の対象となります。

上場管理部は、株主・投資者保護及び公正かつ健全な市場の実現のため、企業行動規範の遵守状況について審査を行います。

企業行動規範の主な項目

(遵守すべき事項)

  • 第三者割当に係る遵守事項
  • 流通市場に混乱をもたらすおそれ又は株主の利益の侵害をもたらすおそれのある株式分割、株式無償割当て、新株予約権無償割当て、株式併合、単元株式数の変更の禁止
  • 独立役員の確保義務
  • 内部者取引の禁止  など

(望まれる事項)
  • 望ましい投資単位の水準への移行及び維持
  • 取締役である独立役員の確保
  • 内部者取引の未然防止に向けた体制整備 など

  • 企業行動規範の概要につきましては、以下をご参照ください。
企業行動規範

上場会社に対する措置

上場管理部は、有価証券上場規程の実効性を確保するため、上場会社による同規程の違反行為について、必要に応じ、上場会社に対し以下の措置を実施することを決定することができます。
上場管理部は、措置の決定に際して、上場会社に対し、資料の提出や事情説明を求めるなどして事実関係を確認したうえで、投資判断情報としての重要性や違反行為の内容、違反が行われた経緯、原因及びその他の事情などを総合的に勘案し最終的な判断を行います。
なお、特別注意銘柄の指定解除や改善状況報告書の提出に際しては、上場会社の内部管理体制等が適切に改善されているか確認するために、必要に応じ、実地調査なども行います。

上場会社等に対する措置の一覧

特別注意銘柄への指定
改善報告書の徴求
公表措置
上場契約違約金の徴求

上場廃止に係る審査

投資対象物件としての適格性を喪失した状態の金融商品が上場を継続していた場合、投資者に不測の損害を与え、ひいては金融商品市場全体の信頼性を損なうこととなります。
このような事態を避けるために、上場管理部は、有価証券上場規程に基づき、投資対象物件としての適格性を喪失している恐れのある金融商品について、上場廃止基準への該当性に係る審査を行い、また、上場廃止基準に該当していると認めるときは、当該金融商品の廃止を決定します。

  • 上場廃止基準の概要につきましては、以下をご参照ください。
上場廃止基準の概要

例えば、上場株券等が、上場廃止基準に該当するおそれがある場合には、その事実を投資者に周知するため、監理銘柄に指定されます。監理銘柄に指定されている期間中、上場管理部による上場廃止基準への該当性の審査が行われます。
そして、上場管理部は、審査の結果、上場株券等が上場廃止基準に該当していると認めるときは、上場廃止を決定します。また、その事実を投資者に周知するため、当該上場株券等は、上場廃止日の前日までの間、「整理銘柄」に指定されます。

上場管理の流れ

上場管理の流れの図

市場運営会社である東証の上場部は、上場会社から会社情報の開示に関して相談を受けるなど、上場会社による会社情報の開示をサポートする業務にあたります。
一方、上場管理部は、市場運営会社から独立した立場で、上述した各種上場管理に関する自主規制業務を行っております。その自主規制業務を行う上で、必要に応じて上場会社や関係者に対してヒアリングを実施するなどして事実関係の確認し、個別の事案について、十分な検討又は審査を行っていきます。
そして、上場管理部の審査結果は、上場部に通知されます。この通知の内容を受けて、東証は、上場会社に対して、措置を実施します。なお、上場会社に対する措置の内容は、当ウェブサイトにおいて公表されます。

未然防止型上場管理

未然防止型上場管理

上場管理部は、有価証券上場規程への違反行為に対して措置を行うなど事後的な対処ばかりでなく、違反行為を未然に防ぐことも重要な業務と位置づけております。

具体的には、東証上場部と協働して適時開示前の事前相談において問題点等を指摘したり、上場会社を訪問して内部管理体制等について意見交換を行うとともに、刊行物の発刊、専門誌への解説文の寄稿、専門家による講演等の開催などの情報発信も積極的に行っております。
なお、JPX-Rが発刊した刊行物及び開催したセミナーにつきましては、以下をご参照ください。

刊行物・パンフレット
セミナー・イベント