信用取引の権利処理

対象

制度信用取引の権利処理の対象としては、次の条件を満たしている必要があります。

  • 株主であれば当然享受できるであろう利益が生ずること。
  • 権利落ちの時点で金銭的に評価できるものであること。
  • 譲渡可能なものであること。
  • 売買単位に比して平均的比例的に利益が受けられるものであること。

具体的には配当金、株式分割による株式を受ける権利、新株予約権等が権利処理の対象に該当いたします。
一方、株主総会の議決権、株主帳簿閲覧権、株主優待券等は、これを権利として処理を行わないものとしています。

 

配当金の場合

配当金については、金額が明示されているため、その金額と同額を対象とします。
具体的には、1株当たりの配当金額から源泉徴収税額相当分を控除した額を、信用取引で買付けている顧客は証券会社から受け取り、売り付けている顧客は証券会社に支払います。
ここでやり取りをする額は、「配当」そのものではなく「配当金相当額」となります。また、控除するのも「税金」ではなく「税金相当額」を差し引くことになります。

 

株式分割、有償割当増資、会社分割を行った場合

制度信用取引によって売買している銘柄に、株式分割による株式を受ける権利又は新株予約権等の権利が付与された場合には、次のいずれかの調整方法により、売り方・買い方双方の不公平をなくします。

 

売買単位の整数倍の新株式が割り当てられる株式分割の場合

株式分割の比率に応じて、制度信用取引の売付株数又は買付株数を増加し、約定値段を減額します。

~例えば、分割比率が1:2の場合~

    (分割前) (分割後)
  買付(売付)株数 1000株 2000株
  約定値段 900円 450円

 

ただし、分割比率が1:1.5、1:2.5といった小数点を含む株式分割の場合、調整後の株数に単元未満株が生じることなり、反対売買による信用取引の弁済ができなくなってしまうことから、金銭による権利の調整(「新株予約権又は売買単位の整数倍以外の新株式等が割り当てられる場合」参照)が行われます。

 
 

新株予約権又は売買単位の整数倍以外の新株式等が割り当てられる場合

取引所が定める権利処理価格を最初の売買値(約定値段)より引き下げます。

~例えば、分割比率が1:1.5の株式分割の場合~

    (分割前) (分割後)
  買付(売付)株数 1000株 1000株
  約定値段 900円 (注) 610円

 
  • 分割後約定値段=最初の売買値(900)-権利処理価格(290)(権利処理価格はあくまで例示です。)
 

実務的には、証券金融会社が付与された新株式又は権利を金銭に換価した額を権利処理価格とし、これに基づく金銭を顧客と証券会社の間において授受することにより処理を行います。

証券金融会社において貸株よりも融資の方が多い場合には、手元に融資担保株券があるので、証券金融会社は自社名に名義を書き換えて一時的に権利を取得してこれを売却処分して金銭換算します。

逆に、貸株の方が融資よりも多い場合には、証券金融会社はその超過分を外部の株主から借りているので、剥離した権利を証券金融会社が買い付けて返済しなくてはならないため、その際の買付けに要した費用をもとに金銭換算します。

では、一般的な前者(貸株よりも融資の方が多い銘柄)のケースについて手続きをご説明しましょう。具体的には、証券金融会社は新株式等について融資申込みをしている証券会社から新株引受申込みを受けたのち、これにより全株消化されなかった場合には、証券金融会社に割り当てられる新株式等(入札株数)について、競争入札方式(権利入札)により売却処分します。

この入札による落札代金総額を落札株数で除して算出した落札平均価格に新株式割当率を乗じて権利処理価格を算出します。

また、新株引受申込みにより全株消化した場合は、権利付売買最終日の終値等に基づいて算出した価格を権利処理価格とします。

証券会社は、買付けを行っている顧客には、買付株数に権利処理価格を乗じた金額を交付し、一方、売付けを行っている顧客から、売付け株数に権利処理価格を乗じた金額を徴収します。ただし、その交付・徴収は、貸付け代金から差し引く又は売付け代金から差し引く形で行われるので、顧客の債務の一部弁済が行われることとなります。