議決権電子行使プラットフォームの運営

機関投資家の議決権行使姿勢の高まり

1990年代のいわゆるバブル崩壊の過程で、株式の相互持合いの解消が進み、わが国の証券市場の株主構成は大きく様変わりしました。全国証券取引所が毎年実施している株主分布状況調査の所有者別持ち株比率によれば、1990年3月には市場全体の33.6%を保有していた銀行および生損保の比率は2000年3月には24.0%、2004年3月には12.9%にまで低下しました。他方、1990年3月には市場全体の14.2%だった信託銀行および海外投資家による保有比率は、2000年3月には23.3%、2004年3月には37.1%に上昇しており、持合いの解消によって放出された株式が年金基金や投資信託等の国内機関投資家や海外の投資家の投資対象となったことを示しています。

元来これらの機関投資家は、株主総会での議決権行使に十分な関心を払っていたとはいえません。しかし、1990年代初期に米国においてエリサ法(従業員退職所得保障法)に関する労働省通達により議決権行使が受託者責任の一環であると位置づけられたことや、米国の公的年金が投資先に対するコーポレートガバナンスの強化を求める一環として積極的に議決権行使を行う姿勢を打ち出したことなどから、機関投資家はいわゆる「もの言う株主」としての存在感が急速に高まりました。この流れを受けたわが国においても、2000年前後から、年金基金等の議決権行使のガイドライン策定が活発化するなど受託者責任に対する意識が高まり、議決権行使のあり方が見直されるようになりました。

議決権行使にあたっての実務上の問題

しかしながら、わが国では実質的な議決権行使権限を持つ国内外の機関投資家が実際に議決権行使を行う場合、適正に議案を検討するための十分な期間を確保できないという実務上の問題が生じていました。これは、日本の株主総会が毎年6月に集中していることや、招集通知の発送から総会開催日までの期間が短いことが主な要因ですが、事務フロー面の制約も無視できない問題でした。
国内では、一般的に機関投資家は資産管理業務を担う管理信託銀行を経由して、郵送により招集通知等の議案情報を受領します。これは株主名簿上の株主(名義株主)が管理信託銀行となっているためです。これにより、実際に機関投資家が書類を受け取るまでに数日を要することになります。

また、議決権行使についても同じように管理信託銀行を経由して行われます。管理信託銀行は機関投資家から議決権行使のための指図を受領し、集計後発行会社(株主名簿管理人)へ返送します。その際、事務プロセスに必要な時間を考慮し、機関投資家に対しては、発行会社が設定する議決権行使の締切日よりもさらに前倒しして期限(5営業日前程度)を設定するのが一般的です。したがって、機関投資家の議案検討期間は、個人投資家等の名義株主よりも相当程度短いものとなります。仮に、招集通知発送日が法定の2週間前発送である場合、実際の議案検討期間は3営業日程度となり、議案の検討に十分な時間を確保ができない状況となっていました。

一方、海外機関投資家については、より複雑なプロセスとなっています。海外機関投資家がわが国の企業の株式を保有する場合、一般的には彼らが契約を結んでいるグローバルカストディアンが名義株主となります。グローバルカストディアンは、複数の市場にまたがる有価証券の保管業務の取扱いを一括して行う金融機関であり、各国市場での証券の受渡しや保管のために常任代理人(サブカストディアン)を選定するのが一般的です。したがって、海外機関投資家の場合、議案情報の入手と行使指図ともにグローバルカストディアンと常任代理人の双方を経由することになり、議案検討期間は、国内の機関投資家よりもさらに短いものとなっています。

また、海外機関投資家は招集通知の現物をはじめとした総会資料の入手が困難であり、通常、常任代理人が「取締役選任」という議題のみを翻訳して電子メール等で伝達するのが一般的で、議案検討に必要な情報を得にくい点も実務上の問題の一つとして指摘されています。

以上のような実務上の問題を解決し、機関投資家が適確な議決権行使が行える環境を実現する手段として、「議決権電子行使プラットフォーム」が構築されました。