投資リスク

2019年7月末日現在上場しているインフラファンドは、いずれも太陽光発電設備を中心とする再生可能エネルギー発電設備に投資を行うファンドです。
以下では、このようなインフラファンドに特有の投資リスクのうち特に留意すべきと考えられる事項について解説します。
なお、以下の内容は、2019年7月末日現在の法令・諸規則等に基づくものであり、その後の法令・諸規則等の改正により変更される可能性があることにご留意ください。また、個別のインフラファンドへの投資に際しては、各インフラファンドの開示資料等を確認の上、自己責任で行っていただくようお願いいたします。

固定価格買取制度に係るリスク

現状のインフラファンドの主な特徴として、賃料収入の源泉である、再生可能エネルギー発電設備の賃借人の売電収入が固定価格買取制度という法律上の制度に支えられているという点が挙げられます。
固定価格買取制度は、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年8月30日法律第108号。その後の改正を含みます。)(以下「再エネ特措法」といいます。)に基づき、発電事業計画について経済産業省の認定を受けた再生可能エネルギー発電設備を用いて発電された電気について、固定の調達価格で、固定の調達期間にわたり買い取ることを、電力会社に義務付ける制度です。電力会社による電気の買取費用の一部は電気の利用者から賦課金という形で集められているため、電気の利用者が再生可能エネルギー発電の導入についての最終的なコスト負担者となります。
インフラファンドが保有する再生可能エネルギー発電設備は、基本的に、固定価格買取制度に基づく認定を受けた設備であるため、インフラファンドから再生可能エネルギー発電設備を賃借して発電事業を行う賃借人は、電力会社から安定的かつ継続的に売電収入を得ることができ、その結果、インフラファンドはかかる売電収入を背景として安定的かつ継続的な賃料収入を得ることができることになります。
以下では、かかる固定価格買取制度に関するリスクについて解説します。

リスクの概要 内容
固定価格買取制度の変更・廃止に関するリスク 固定価格買取制度は法律により定められた制度であるため、その存続及び内容は国の政策判断に左右されることになります。実際、固定価格買取制度に基づく国民のコスト負担等を背景に、再生可能エネルギー発電を取り巻く情勢は常に変化しており、今後、こうした情勢の変化を受けて固定価格買取制度が変更又は廃止される可能性があります。
このように固定価格買取制度が変更又は廃止されたとしても、基本的には、その時点で発電事業計画の認定を受け運転を開始している再生可能エネルギー発電設備に対しては影響が及ばないように所要の手当てがなされるものと想定されます。しかし、当該制度の変更又は廃止の結果、それ以降に新規に開発・建設される再生可能エネルギー発電設備の数が減少する可能性があります。また、再生可能エネルギー発電設備が新規に開発・建設される場合でも、当該再生可能エネルギー発電設備の採算性が低下するなどして投資に適さないものとなる可能性があります。結果として、インフラファンドによる新規の再生可能エネルギー発電設備の取得に支障をきたす可能性があることに留意が必要です。
また、上記想定に反し、既に運転を開始している再生可能エネルギー発電設備に影響を与える形で固定価格買取制度が変更又は廃止されることとなった場合、賃借人である発電事業者が発電事業を継続できなくなる可能性や、従前と同様の条件で電力会社から売電収入を得ることができなくなる可能性があります。これらの事情が現実に生じた場合、インフラファンドが既に保有するポートフォリオにおいて、売電収入に連動する形で定められている賃料額が減少したり、連動しない形で定められている賃料についても、その支払原資が不足することにより賃料の支払が滞る可能性があります。そのため、インフラファンドの賃料収入が減少し、最終的には、インフラファンドやその投資家の利益に悪影響が生じる可能性があります。
このようにインフラファンドの収益は、固定価格買取制度に支えられているため、当該制度の変更又は廃止により大きな影響を受ける可能性があることに留意が必要です。
固定の調達価格・調達期間 固定価格買取制度の認定を受けて運転を開始した再生可能エネルギー発電設備については、運転開始時に適用された調達価格及び調達期間は、原則として事後的に変更されることはないため、インフラファンドは、同制度が適用される再生可能エネルギー発電設備に投資することで、安定的かつ継続的な収益を見込むことができます。ただし、再エネ特措法上、物価その他の経済事情に著しい変動(急激なインフレーションやデフレーション、スタグフレーションのような例外的な事態が想定されています。)が生じ、又は生ずるおそれがある場合において、特に必要があると認めるときは、調達価格又は調達期間を改定することができるものとされています。このような調達価格又は調達期間の改定が行われた場合、発電事業者である賃借人の売電収入が減少し、その結果、インフラファンドの賃料収入が減少することにより、インフラファンドやその投資家の利益に悪影響が生じる可能性があります。
また、再生可能エネルギー発電設備を用いて発電した電気の調達価格及び調達期間は、原則として、毎年度、経済産業大臣が調達価格等算定委員会の意見を聴いた上で定めるものとされています(なお、発電設備の種類・規模によっては、入札により調達価格が定められる場合があります。)。技術革新や市場競争による建設コストの低下を反映して、調達価格は年々引き下げられており、今後、更に引き下げられる可能性があります。将来の固定価格買取制度の運用において、調達価格が低く設定された場合、又は調達期間が短く設定された場合、新規に建設される再生可能エネルギー発電設備の数が減少する可能性や、新規に開発・建設される再生可能エネルギー発電設備の採算性が低下するなどして投資に適さないものとなる可能性があり、その結果、インフラファンドによる新規の再生可能エネルギー発電設備の取得に支障をきたす可能性があることに留意が必要です。
インフレに対する脆弱性 固定価格買取制度に基づく調達価格は固定されているため、インフレにより物価が上昇した場合でも、売電価格を増額することができず、発電事業者である賃借人の売電収入が実質的に目減りする可能性があります。その影響は、売電収入を原資とするインフラファンドの賃料収入にそのまま及び、後者の実質的な目減りを招く可能性があります。また、インフレによる物価の上昇に伴い、再生可能エネルギー発電設備の管理・運営に関する費用等が増加する可能性もあります。これらの場合、インフラファンドの収益が悪化し、その結果、インフラファンドやその投資家の利益に悪影響が生じる可能性があることに留意が必要です。
出力制御 昨今、インフラファンドの投資する太陽光発電設備において、出力制御が実施される事例が見られるようになってきました。出力制御とは、電気の需要と供給のバランスを確保するため、電力会社が太陽光発電設備について出力の抑制を要請し、出力量を制御する仕組みです。電力会社における電気の供給量がその需要量を上回ることが見込まれる場合等、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則(平成24年経済産業省令第46号。その後の改正を含みます。)に定められる一定の事由に該当する場合に出力制御が求められます。かかる出力制御が実施される場合、発電事業者である賃借人の売電収入が減少する可能性があり、その結果、これを原資とするインフラファンドの賃料収入が減少し、インフラファンドやその投資家の利益に悪影響が生じる可能性があることに留意が必要です。
調達期間満了後の売電 固定価格買取制度に基づく調達期間が満了すると、再生可能エネルギー発電設備は固定価格買取制度の適用対象外となるため、電力会社は、それ以降当該再生可能エネルギー発電設備を用いて発電した電気を一定の価格で買い取る義務を負いません。したがって、調達期間が満了した再生可能エネルギー発電設備で発電事業を継続するためには、電力会社と交渉して価格や条件を合意した上で売電を継続するか、卸売電力取引所等の市場で売電する必要があります。このような場合、適切な売電先が見つからない可能性があることはもとより、売電先が見つかった場合又は市場で売電する場合であっても、固定価格買取制度に基づく従前の買取価格や条件に比して不利な買取価格や条件で売電することを強いられ、発電事業者である賃借人の売電収入が減少する可能性があり、その結果、これを原資とするインフラファンドの賃料収入が減少し、インフラファンドやその投資家の利益に悪影響が生じる可能性があることに留意が必要です。

資産特性に係るリスク

リスクの概要 内容
償却資産としての特性 既存のインフラファンドは、再生可能エネルギー発電設備の中でも太陽光発電設備を主な投資対象としていますが、太陽光発電設備はJ-REITの投資対象である建物とは異なる資産特性を有しています。
まず、多くの太陽光発電設備は地方に所在しているため、太陽光発電設備及び敷地の取得価格において、土地の価格が占める割合が相対的に低い一方で、太陽光発電設備の価格が占める割合が相対的に高く、その結果、インフラファンドの総資産に占める償却資産の比率が高い傾向にあります。また、太陽光発電設備の法定耐用年数は17年であり、建物(例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造の事務所棟の用途を有する建物の法定耐用年数は50年とされています。)と比較して短い年数が設定されています。そのため、インフラファンドにおいては、J-REITと比較して相対的に多額の減価償却費が計上される傾向にあります。減価償却費は支出を伴わない費用であるため、インフラファンドの手元にはその分現金が残ることとなります。かかる状況が継続すると、太陽光発電設備の帳簿価格が減価償却の進行により減少する一方で、現金が増加するため、上場廃止基準のうち資産組入比率の基準(「運用資産等の総額に占めるインフラ資産等の額の比率が、インフラファンドに係る毎営業期間の末日において70%未満となった場合において、1年以内に70%以上とならないとき」)に抵触する可能性が生じることに留意が必要です。かかる事態を避けるためには、新規資産を追加取得することにより資産組入比率を維持する必要があります。
また、上記のとおり、インフラファンドにおいては、減価償却費の計上に伴い手元資金が増加する傾向があります。かかる手元資金を用いた取組みとして、保有資産の修繕・増設や新規資産の追加取得といった再投資や借入金の返済が考えられるほか、投資家への還元策として、減価償却費に相当する資金の一部を、利益を超えた金銭の分配(以下「利益超過分配」といいます。)として投資家に分配することが考えられます。株式会社における剰余金の配当と異なり、投資法人においては利益超過分配が認められており、実際に、多くのインフラファンドにおいて利益超過分配が継続的に行われていますが、利益超過分配は出資の払戻しとしての性質を有します。
かかる出資の払戻しの性質を持つ利益超過分配が継続的に実施された場合、インフラファンドの資産総額(現金)及び純資産総額(出資総額)が減少することとなり、上場廃止基準(「資産総額が、インフラファンドに係る毎営業期間の末日において25億円未満となった場合において、1年以内に25億円以上とならないとき」、「純資産総額が、インフラファンドに係る毎営業期間の末日において5億円未満となった場合において、1年以内に5億円以上とならないとき」)に抵触する可能性が生じることに留意が必要です。
更に、インフラファンドが多額の減価償却費を用いて利益超過分配を実施する結果、インフラファンドの分配金に占める利益超過分配の割合が高くなる場合があることにも留意が必要です。その場合、手元に分配される金額が多額であっても、会計上は、利益の分配の額自体は少額であり、実際上は多額の出資の払戻しが行われていることになります。したがって、投資採算を検討する際には、単なる分配金利回りのみならず、利益の分配額及び利益超過分配額の内訳を適切に把握することが必要となります。
オペレーショナル・アセット インフラファンドの取得する再生可能エネルギー発電設備は、オペレーターが当該設備を管理・運営することにより収益が生じるという、いわゆるオペレーショナル・アセットとしての特性を有しています。すなわち、再生可能エネルギー発電設備の収益性は、オペレーターの管理・運営能力による影響を受け得ます。したがって、インフラファンドのスキーム上、オペレーターの役割が重要となります(オペレーターは、賃借人が兼任する場合と、SPCが賃借人となり、SPCがオペレーターに別途資産の管理・運営を委託する場合があります。)。かかる点を踏まえ、当社の有価証券上場規程等においてオペレーターの選定や情報開示についてのルールを定めており、インフラファンドの上場に当たっては、オペレーターの選定基本方針や選定基準の策定や実際の選定状況について審査を行うこととし、また、オペレーターに関する一定の事実が適時開示事由としています。
オペレーターについて財務状況の悪化や倒産手続の開始等の事由が生じた場合、再生可能エネルギー発電設備の管理・運営に支障が生じる可能性があります。その場合、オペレーターの交代に踏み切る必要を生じ得ますが、オペレーターとしての業務には専門的な知識・経験が求められることから、十分な知識・経験を有するオペレーターを適切なタイミングで選任することができない可能性があります。その結果、売電収入や賃料収入が減少し、インフラファンドやその投資家の利益に悪影響が生じる可能性があることに留意が必要です。

税務上の導管性に係るリスク

リスクの概要 内容
20年の限定期間 J-REITにおいては、一定の要件(以下「導管性要件」といいます。)を満たす場合、税務上、配当等の額を損金に算入し、投資法人の法人税を実質的に非課税とする取扱いが認められており(いわゆるペイスルー課税)、インフラファンドにおいても同様の税務上の取扱いが認められています。かかるペイスルー課税により、投資法人に対する課税と投資家に対する課税が重複する二重課税を回避することが可能となります。
しかし、J-REITと異なり、インフラファンドの導管性は、現在の制度上、再生可能エネルギー発電設備を賃貸した場合に限り、かつ、上場後約20年に限り認められていることに留意が必要です。すなわち、再生可能エネルギー発電設備に投資するインフラファンドの場合、導管性要件を満たすために一定の特例を受ける必要がありますが、かかる特例の適用は、再生可能エネルギー発電設備を最初に取得した日から、再生可能エネルギー発電設備の貸付けを最初に行った日以後20年を経過した日までの間に終了する各事業年度に限るものとされています。現行制度上、インフラファンドは約20年に限り導管性を有するにとどまり、恒久的な導管性を有していないこととなっています。したがって、かかる特例の適用期間の経過後は、インフラファンドが導管性要件を満たさない場合が生じることが予想され、その場合、インフラファンドの税負担額が増大し、ひいては投資家の利益に悪影響が生じる可能性があることに留意が必要です。
賃貸スキームに係る規制 インフラファンドが上記特例の適用を受けるためには、インフラファンドが直接又は匿名組合出資を通じて投資する再生可能エネルギー発電設備の運用方法を賃貸に限定する必要があるという規制があるため、インフラファンドの投資方法が一定程度限定されることに留意が必要です。
例えば、私募ファンド等において開発・建設された再生可能エネルギー発電設備について、当該設備を保有・運用する資産保有SPCに対する匿名組合出資持分をインフラファンドに組み入れるケースを考えてみましょう(いわゆる間接投資の事例)。
しかし、第一に、上記規制の下では、資産保有SPCは再生可能エネルギー発電設備を第三者に賃貸しなくてはならず、既存のスキームを変更する必要があります。すなわち、当該第三者が爾後、売電事業を営むことになりますが、そのためには、資産保有SPCのレンダー(プロジェクトファイナンスが組まれていることが通常です)の承諾はもちろんのこと、同設備に係る認定及び売電事業に関わる各種契約上の地位の承継が必要となり、その手続には負担が伴います。また、投資法人は、導管性要件として、他の法人の発行済株式又は出資(匿名組合出資を含みます。)の総数又は総額の50%以上を有していないことが求められており、かかる観点からもインフラファンドによる匿名組合出資持分の譲受スキームには制約が伴うことになります。
このように、インフラファンドが導管性要件を満たすために賃貸スキームを求められる結果、再生可能エネルギー発電設備の円滑かつ機動的な取得が行えない場合があり得ることに留意が必要です。