自主規制業務の概要

自主規制業務を適切に遂行するためには、公益や投資者保護を主眼に置いた高い次元の自律性と公正、中立な立場に立って管理運営する組織体制が必要不可欠であると考えられます。また同時に自主規制業務の遂行にあたっては、市場で起きる様々な事象に対して、迅速かつ的確に対処することが必要とされるとともに、市場の機能や特性を熟知した高い専門性も求められます。そのため、世界的にも自主規制業務は取引所自身が担ってきたところです。
しかしながらその一方で、取引のボーダーレス化や国際的な市場間競争が進展するにつれて、取引所組織として環境変化に柔軟に対応し、より強力に効率性、利便性の向上を推進していくことが益々重要となってきています。

そこで、自主規制の中立性・実効性と取引所の事業戦略性・収益性の確保というこの二つの要求を同時に解決する方法として、日本取引所グループは、取引所の同一グループ内において別法人として、自主規制業務を専門に行う自主規制法人を設置する組織体制を選択しました。つまり、市場に近い立場にいて高い専門性を発揮し、かつ、取引所からは独立して中立的な立場から実効性の高い業務執行を実現するねらいです。加えて、日本取引所自主規制法人(以下「JPX-R」という)の業務遂行における最上位の意志決定機関である理事会は過半が外部理事により構成され、意思決定においても独立したガバナンス体制が機能しています。
具体的なJPX-Rの業務遂行は、取引所と自主規制法人は連携して常に必要な情報を共有しますが、自主規制法人が独立して中立的な審査を行い、その審査結果に基づき、取引所が承認又は処分その他の措置等を行うこととしています。

他方、海外に目を向けると、自主規制業務の組織体制は、米国では取引所とは別の統合された自主規制機関(FINRA)が存在し、また、英国では統一の規制当局(FCA)が存在する一方で、アジアの各国では引き続き取引所が自主規制業務を行う組織体制が一般的であるなど、自主規制はそれぞれの市場の発展の歴史や法体系、慣行により、様々な形態があり、各国や地域それぞれが固有の組織体制を構築しているといえます。

JPX-Rの組織と業務執行体制は、取引所を取り巻く国際的な環境変化や我が国の歴史に根ざしたものであり、世界的に見てもユニークな組織形態です。JPX-Rとしては、今後も市場の公正を確保し投資者の皆様に信頼していただけるよう、市場環境や法体系に即して、引き続き実効性の高い自主規制業務を遂行していきたいと考えています。